【寄稿】2018年「タラノア対話」はどう行われるのか

昨年11月にドイツ・ボンで開催されたCOP23フィジー会議の会場の様子(C)WWFジャパン
昨年11月にドイツ・ボンで開催されたCOP23フィジー会議の会場の様子(C)WWFジャパン【拡大】

  • タラノア対話に関するウェブポータル出所:https://talanoadialogue.com
  • WWFジャパン自然保護室気候変動・エネルギーグループ長山岸尚之

 ■目標引き上げプロセスで求められる日本の貢献

 □WWFジャパン 自然保護室 気候変動・エネルギーグループ長 山岸尚之

 ◆タラノア対話の意義

 昨年11月のCOP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)で発足が決まった「タラノア対話」は、パリ協定の今後を占う意味でも重要なプロセスである。

 パリ協定は、各国が独自に策定する温室効果ガス削減目標などの「国別目標(NDC)」が取り組みの中心となるが、現状は不十分な水準にとどまっている。それを改善していく仕組みとして、パリ協定の中に導入されたのが、5年ごとの目標改善プロセスである。タラノア対話はその仕組みの最初の機会となるもので、グローバルに、現状の取り組みの進捗確認を行う役割を担う。この進捗確認を受け、各国は自国の国別目標を2020年までに、再提出もしくは更新することになっている。

 タラノア対話は正式には2018年の「促進的対話」と呼ばれる。COP23でそのプロセスの設計を決めた際、議長国のフィジーが、自国の言葉で「誰も拒まない、オープンな対話」を意味するタラノアという言葉を冠した。

 ◆2018年の年間予定

 タラノア対話はどのように実施されるのだろうか。

 タラノア対話の中心をなすものは、パリ協定実施に関する、以下の3つの問いである。

 (1)現状どこにいるのか?

 (Where are we?)

 (2)どこに到達したいのか?

 (Where do we want to go?)

 (3)どのように到達するのか?

 (How do we get there?)

 この3つの問いに対し、前半の「準備的フェーズ」、後半の「政治的フェーズ」の2段階を通じて答えていくのが基本構造である。

 今後のおおまかなスケジュールは、まず4月2日までに各国政府と非国家主体(企業、自治体、市民社会など)が、3つの問いに対する意見・見解を提出する。それらを踏まえて、4月末~5月上旬に開かれる補助機関会合(SB)で議論が行われる。

 秋ごろには、直接、タラノア対話との関連が位置づけられているわけではないものの、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による1.5℃目標に関する特別報告書が発表されるほか、米カリフォルニア州による世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)、国連総会に合わせた気候週間(Climate Week)などが予定され、タラノア対話にインプットされることが期待されている。

 また、10月29日を期限に、各国政府と非国家主体から再び意見・見解の提出があり、それらを踏まえた統合報告書が作成される。

 それらすべてをベースにして、「政治的なフェーズ」となる、12月のCOP24(ポーランド・カトヴィツェ)で、政策決定者を交えて議論が行われる予定である。ここでは、各国閣僚によるラウンドテーブルも開催される。

 このようにタラノア対話は、1日限りの特定のイベントを指すのではなく、1年間を通じた一連のプロセスを指す。

 ◆地域版・各国版タラノア対話

 このプロセスのいずれの段階でも、政府だけでなく、非国家主体からの参加が奨励されている。これは、パリ協定の実施に当たって、非国家主体のアクションが生み出すモメンタム(勢い)が重要という近年の認識を反映したものだ。

 そのため、前述したような公式プロセスに加え、COP23で合意された文書では、各国政府・非国家主体に対し、各国内の地方、各国、地域(アジアなどの複数国を含む)、そして世界的なレベルでイベントを開催し、タラノア対話の問いへの意見・見解の提出準備を奨励している。

 これは、タラノア対話のためだけに新たなイベントを開催するということに加え、既存の国際会議や国内イベントの中に、タラノア対話をテーマとするセッションを追加するということも想定している。

 ◆すでに始まる「タラノア」

 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は、タラノア対話に関するウェブサイトを開設し、各国政府・非国家主体からの意見・見解を受け入れるプラットフォームをすでに整えている。

 本稿執筆時点では、動きはまだ少ないが、すでにさまざまな機関・主体がタラノア対話を見据えた計画の検討を始めている。

 今年1月に開催された世界経済フォーラム(WEF、通称・ダボス会議)でも、タラノア対話を意識したパネルディスカッションが組まれていた。

 さらに、WWFなども含む非国家主体が合同で、「#Step Up 2018キャンペーン」という名前で、ツイッター上の共通ハッシュタグを使って、各主体のさまざまな取り組みにつながりを見せようとする試みを始めている。

 ◆目指すものは?

 年間を通じたイベントや議論を通じて、タラノア対話は何を達成しようとしているのか。それは、第一義的には、各国のパリ協定実施状況をレビューし、それが協定の目的(2℃目標や1.5℃目標の達成など)にとって十分かを確認し、その後の各国の取り組みに活かせるようにすることである。しかし、タラノア対話を重視する主体の一番の目的は、「各国が不十分な目標を引き上げること」に尽きる。これは容易なことではない。日本を例に挙げるまでもなく、各国の国別目標はそう容易に変えられるものではない。

 しかし、パリ協定の目的に照らし合わせて、現状の取り組みでは不十分というのはすでに共通見解である。それを引き上げるための方策を探り、かつ、そのために必要な政治的な機運を、建設的な議論の中で国際的に創り上げていくことが、タラノア対話の最大の目的と言える。

 そのプロセスに、日本の政府・企業・自治体、そして市民社会が、いかに貢献していくかが、今、問われている。

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【プロフィル】山岸尚之

 2003年に米ボストン大大学院修士号を取得後、WWFジャパンで温暖化とエネルギー政策提言に従事。