【ジャカルタレター】統一首長選挙 警察に政治的サポートの動き

1月に発生した首都ジャカルタの証券取引所ビル崩落事故で出動した警官隊。インドネシア警察は政治に強い影響力をもつ(ブルームバーグ)
1月に発生した首都ジャカルタの証券取引所ビル崩落事故で出動した警官隊。インドネシア警察は政治に強い影響力をもつ(ブルームバーグ)【拡大】

 インドネシアでは選挙運動の期間が長く、今回の統一首長選挙では2月15日から6月23日までが選挙運動、3日間の冷却期間をおいて、6月27日が投開票となっている。そのため、再選を目指す現職知事は選挙運動が始まると職を辞し、新しい知事が決定するまでの数カ月間は、知事の代わりをたてることになる。副知事が選挙に出ない場合は副知事が、両者が選挙に出る場合は内務大臣が役人を中央から送り、知事の代わりを果たすことが恒例となっている。

 しかし、今回、西ジャワ州と北スマトラ州では、内務大臣が知事の代わりとして警察を任命すると公表したため、多くの非政府組織(NGO)、政党から批判が上がった。

 ◆権力を誇示

 軍や警察が政治にも大きな影響力を及ぼしていたスハルト政権時の記憶からも、警察が短い期間であれ知事の代わりを務めることに大きな反発があっただけではない。特に、西ジャワ州知事選挙には、与党の闘争民主党(PDIP)から知事候補とともに推薦を受けている副知事候補が警察幹部出身であり、選挙を行う上でも中立的ではないことなどが批判の主な理由だ。

 結局、あまりにも批判が激しいため、恒例の対応となったが、警察が政治的なサポートを得て権力を誇示する場面が頻繁にみられるようになったと懸念されている。

 警察による人権活動家への嫌がらせも権力を誇示する一つのやり方である。インドネシアで最も歴史のある人権NGOの一つである法律擁護協会(LBH)の代表が、テレビ番組でノベル・バスウェダン氏襲撃事件を取り上げ、いまだに真相究明ができていない警察の怠慢を批判した。

 ノベル・バスウェダン氏の事件とは、国会議長を含む多くの議員が関わっているとされる電子IDカード導入に絡んだ巨額な汚職事件の調査を担当していた汚職撲滅委員会の捜査官であるノベル氏が、昨年4月に何者かによって顔に酸をかけられ負傷した事件のことである。ノベル氏は、シンガポールに緊急搬送されたが、片目を失明し、もう片方の目も辛うじて見える程度の視力しか戻っていない状態である。

 犯人が誰の指示で酸をかけたのかによって汚職事件の真相にも迫れるだけに、この事件の調査は重要であるが、多くの目撃者や証拠があるのに犯人を捕まえるどころか、警察の捜査はほとんど進展していないのが実情である。

 ◆言論の妨害

 この問題を指摘したLBHの代表は、テレビ番組での発言の後、警察への出頭要請を何度も受けるなどの嫌がらせが続いているという。警察に批判的な発言をした人は、次々に警察への出頭要請を受けており、警察による言論の自由への妨害と市民社会に対する圧力が高まっていることを危惧する声が上がっている。

 与党PDIPの党首メガワティ元大統領と、警察出身の国家情報庁長官で、今もなお警察内に大きな影響力をもつブディ・グナワン氏との関係の近さが、警察への政治的サポートの根源だといわれているが、来年の大統領選をにらんだPDIPの戦略、選挙運動期間中の警察の動きには特に注目していきたい。(笹川平和財団 堀場明子)

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