【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(1)東日本大震災で注目 独自の杭打ち工法

日本人初となったベン・C・ガーウィック賞受賞の喜びを語る北村精男氏=米フロリダ州オーランド
日本人初となったベン・C・ガーウィック賞受賞の喜びを語る北村精男氏=米フロリダ州オーランド【拡大】

  • 創業50年の社史と自らの生い立ちなど様々な事について語る技研製作所・北村精男社長=高知市布師田の技研製作所本社(薩摩嘉克撮影)

 今年は明治維新150年。坂本龍馬はじめ維新の立役者を多く輩出した高知は、全県下で「志国高知 幕末維新博」が開催されている。3月15日には全国に先駆けて桜が開花。例年以上の華やかさに包まれた。

 それに先立つ同月9日、1人の「いごっそう」(土佐弁で主義信念を貫く男)が米国フロリダ州オーランドで、建設などの技術開発に関する国際的な賞を日本人として初めて受賞。一足早く高知に「春」を運んできた。

 技研製作所(本社、高知市)の創業者で社長の北村精男(あきお)(77)である。

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 同社は、日本の戦後復興期以降の建設技術の要であった杭(くい)打ち機を、無振動・無騒音化した「サイレントパイラー」(油圧で杭(くい)を静かに地中に押し込む無公害の杭打ち機)を開発。この杭打ち機を用いた「圧入工法」を国内外で普及させていることで知られる。

 この工法は現在、一般的な杭打ち工事、災害復旧工事のほか、国内では、太平洋沿岸部を中心に津波・地震防災のための堤防、橋脚の強化工事や、地下の駐輪、駐車施設の建設などに生かされている。

 それらの業績が認められ、北村は、建設などに関する水中・地中の基礎開発技術の世界的権威「ベン・C・ガーウィック」の名前を冠した賞を受賞した。

 ガーウィックは、建設史上の難工事とされ、世界の施工技術の粋を集め、約10年の歳月をかけて完成した「瀬戸大橋」(岡山-香川間全長1万2300メートル)の橋脚施工のアドバイザーを務めた。

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 表彰式は現地時間の8日(日本時間9日)、世界各国の技術者ら約4千人が参加した建設に関する地下開発技術の国際会議「IFCEE」の中で行われた。

 同社のサイレントパイラーと圧入工法は、平成23年の東日本大震災後に国土交通省が海岸堤防の強化工事に初採用して以降、防災関連工事での採用が増加している。あいさつに立った北村は、圧入工法のアピールはそこそこに、「国民の視点に立った建設工事のあるべき姿をこそ追い求めてきた」と強調。時代や人々の生活の変化に対応すべく、よりよき「工法革命」に邁進(まいしん)したいと決意を述べた。

 いごっそうの真骨頂を世界に向け示したのだった。

 北村精男氏が一代で興した「技研製作所」。創業50年を迎えた昨年には、東証1部上場を果たした。首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める同社。世界企業として発展する同社の半世紀を追う。

=敬称略