司法取引、6月スタート 変わる日本の捜査・公判 犯罪首謀者摘発に期待 (2/3ページ)

 「甲はX県の知事、3は3千万という意味です。合わせて5千万になります」

 一般的に賄賂の受け渡しは密室で行われるため、贈収賄事件の立件は困難を極める。弁護人から連絡を受けた検察官は「立件が可能になる」と確信した。こうして司法取引の協議に入ることが決まった。

 協議する場所に決まりはないが、営業部長が容疑者として取り調べを受けていることを考慮し、地検の一室で行われた。

 営業部長、弁護人、検察官の3者がそろって「協議開始書」に署名。協議は録音・録画されないが、その概要は「協議経過報告書」に記載された。

 一方、特捜部は慎重に供述の裏付け捜査を進めた。

虚偽供述で無実の人を巻き込む冤罪の恐れもあるためだ。捜査の結果、手帳に暗号が記載された当日の夜、料亭で知事と営業部長が実際に会食していたことが判明。その後、知事の弟名義の銀行口座に複数回に分けて5千万円が入金されていたことも分かった。

 検察官は弁護人に対し、刑法の談合罪については在宅起訴した上で求刑を大幅に減らし、贈賄罪は起訴猶予とする取引内容を提示した。最高検の運用指針に照らし、事件解明に重要な役割を果たしたことを考慮した結果だった。

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