学芸員と美術品、続く“放浪” 改修計画白紙で出前講座に美術品貸し出し、ある美術館の苦悩 (1/3ページ)

「博士」に扮し、滋賀県内の小学生に美術の出張講座を開く主任学芸員の平田健生さん
「博士」に扮し、滋賀県内の小学生に美術の出張講座を開く主任学芸員の平田健生さん【拡大】

  • 長期休館中の滋賀県立近代美術館。夏休みにもかかわらず館内は静まりかえっている=22日、大津市

 滋賀県立近代美術館(大津市)が、学芸員と収蔵品の「活用」に頭を悩ませている。平成32年春のリニューアルに向け昨春から3年間の予定で休館したが、7月に突如計画が白紙となり、休館が4年以上続く見通しになったためだ。館外活動が続く学芸員のモチベーション維持、約1800点の収蔵品の預け先、休館中の展示…。美術館の苦悩は深い。(川瀬充久)

 子供らに出張講座

 「『ムンクの叫び』の顔を他のものに変えると面白いですよ」

 8月中旬、県内の学童保育施設。白衣をまとい、白髪のカツラに鼻めがねをかけて「博士」風に変装した男性が、子供たちに芸術作品を解説していた。男性は同館主任学芸員の平田健生さん(56)。同館の出張講座だ。

 出張講座は「美術館に足を運ぶ機会のない人も芸術とふれ合う大切な活動」(同館)と位置づけ、休館前から行っている。だが、今年度は2年前の約8倍にあたる162回を予定。実に2日に1回のペースで、学芸員10人の主要業務と化している。

休館による閉鎖で学芸員の環境変化