ビッグデータはある、足りないのは「ロングデータ」だ 「人×AI」で気づいたこと (2/5ページ)

--今回は、メニューの中にラタトゥイユが入っていますね。ラタトゥイユといえば、松嶋シェフのスペシャリテでもあります。

AIが考えた「牛肉のミルフィーユピーナッツ風味」(左)と、こちらも松嶋のスペシャリテである、牛肉と西洋わさびを重ねた「牛肉のミルフィーユ」(右)。「ラタトゥイユと違い、どちらも同じ調理法で作りましたが、AIが考案した牛肉とピーナッツの組み合わせはあまりうまく行きませんでした。素材に合わせて、別の調理法を選択すれば、もっとおいしくなったと思います」(松嶋)

AIが考えた「牛肉のミルフィーユピーナッツ風味」(左)と、こちらも松嶋のスペシャリテである、牛肉と西洋わさびを重ねた「牛肉のミルフィーユ」(右)。「ラタトゥイユと違い、どちらも同じ調理法で作りましたが、AIが考案した牛肉とピーナッツの組み合わせはあまりうまく行きませんでした。素材に合わせて、別の調理法を選択すれば、もっとおいしくなったと思います」(松嶋)

「ジャンドゥーヤ コーヒーゼリーとアイスクリーム」。ジャンドゥーヤとは、ナッツのペーストとチョコレートが混ざった製菓材料。「塩街道」の終着地であるトリノ発祥のスイーツをコースの最後に置くことで、松嶋は、「塩を極力使わない」という今回の隠れテーマに深みを与えた。

「ジャンドゥーヤ コーヒーゼリーとアイスクリーム」。ジャンドゥーヤとは、ナッツのペーストとチョコレートが混ざった製菓材料。「塩街道」の終着地であるトリノ発祥のスイーツをコースの最後に置くことで、松嶋は、「塩を極力使わない」という今回の隠れテーマに深みを与えた。

今回のコースのメニュー。

今回のコースのメニュー。

石川 そう。「ラタトゥイユ」と、もうひとつ「牛肉のミルフィーユ」は、松嶋さんのスペシャリテです。この2品で、松嶋さんの評判は世界にとどろき、ミシュランで星を獲得しました。そんな松嶋さんの看板料理に、今回AIが挑んだわけです。つまり、「人とAIによる知性の対決」という側面も、今回は含まれていたんです。

結論としては、「AIのレシピはおいしいけれど、やっぱり何か違うよね」といったところでしたね。おいしいことはおいしいのですが、自然な感じがしないというか。

AIが提示した「紅茶風味のラタトゥイユ」については、松嶋さんも「これはうまい」と言っていました。「こんなにおいしくなるとは思わなかった」と。ただ、「おいしいけれど、やっぱり何かが違う」とも言っていました。結局AIは理論で考えて、「これは合うはず」と理屈でレシピを出すわけですが、単純に成分しか見ていないわけです。それで作ってもなるほどおいしいのですが、人というのは、料理を食べるときに「歴史だったり別のコンテクストだったり」を感じているのだと、松嶋さんは話していました。そこも含めて、次は進化させたいと思いましたね。

--歴史だったり別のコンテクストというのは、例えばどういうことでしょうか?

石川 それは、松嶋さんからご説明いただきましょうか。

「どこから来たのか」を大切に