--今回は、メニューの中にラタトゥイユが入っていますね。ラタトゥイユといえば、松嶋シェフのスペシャリテでもあります。
石川 そう。「ラタトゥイユ」と、もうひとつ「牛肉のミルフィーユ」は、松嶋さんのスペシャリテです。この2品で、松嶋さんの評判は世界にとどろき、ミシュランで星を獲得しました。そんな松嶋さんの看板料理に、今回AIが挑んだわけです。つまり、「人とAIによる知性の対決」という側面も、今回は含まれていたんです。
結論としては、「AIのレシピはおいしいけれど、やっぱり何か違うよね」といったところでしたね。おいしいことはおいしいのですが、自然な感じがしないというか。
AIが提示した「紅茶風味のラタトゥイユ」については、松嶋さんも「これはうまい」と言っていました。「こんなにおいしくなるとは思わなかった」と。ただ、「おいしいけれど、やっぱり何かが違う」とも言っていました。結局AIは理論で考えて、「これは合うはず」と理屈でレシピを出すわけですが、単純に成分しか見ていないわけです。それで作ってもなるほどおいしいのですが、人というのは、料理を食べるときに「歴史だったり別のコンテクストだったり」を感じているのだと、松嶋さんは話していました。そこも含めて、次は進化させたいと思いましたね。
--歴史だったり別のコンテクストというのは、例えばどういうことでしょうか?
石川 それは、松嶋さんからご説明いただきましょうか。