【ニュースを疑え】元号と西暦「面倒に意味あり」 思想家、内田樹氏に聞く (5/5ページ)

内田樹氏=神戸市東灘区(南雲都撮影)
内田樹氏=神戸市東灘区(南雲都撮影)【拡大】

  • うちだ・たつる『日本辺境論』(平成21年)など幅広く評論を展開する思想家、武道家∥神戸市東灘区(南雲都撮影)
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 「中国は中華皇帝を中心とする同心円構造ですが、日本は焦点が2つある楕円(だえん)構造です。日本は中国の制度文物を学びましたけれど、科挙と宦官(かんがん)だけは採用しなかった。国情に合わないと判断したのです。使い勝手のよいものだけ使ってきた。それでよいと思います」

 「明治以降の一世一元制は西暦に対抗できる暦年法を求めて制定したものです。幕末は文久が4年、元治が2年、慶応が4年で改元しました。改元が頻繁過ぎると、暦年法としては使い勝手が悪いということも新制度採用の一因だったのかもしれないですね」

 平成は陛下のイメージ

 --今回の改元は天皇陛下が「お気持ち」を表明されたことが発端でした

 「平成はひたすら国力国運が衰微した30年間でした。でも、平成という年号でまず回想されるのは、天皇陛下の事績ではないでしょうか。陛下は立憲デモクラシーと天皇制の共生という困難な課題に誠実に取り組まれた。その生き方は多くの国民に感動を与えた。これからは平成という年号を聞いたときに、われわれの世代だと、まず陛下の相貌が思い浮かぶんじゃないでしょうか」

 --新時代への展望や期待はありますか

 「30年前に小渕(恵三官房長官・当時)さんが『平成』の元号を示したとき、音の響きも文字もずいぶん軽いなという感じがしました。でもそれは当たり前で、その文字列と共に記憶されるような経験がその時点ではまだ何もなかったからです。その時は、30年後に平成という元号から自分が天皇皇后両陛下のお顔をまず思い浮かべるようになるとは思ってもみなかった。元号がどんなニュアンスを持つようになるか、それはその時代の日本人がつくってゆくもの、与えていくものなのだと思います」

 【プロフィル】内田樹 昭和25年、東京都生まれ。東京大文学部卒、東京都立大大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。『街場のメディア論』など著書多数。武道家(合気道・師範)

 【用語解説】ニュースを疑え

 「教科書に書いてあることを信じない」「自分の頭で考える」。2018年のノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授はそう語りました。ではニュースを的確に理解し、事実から「真実」を見極めるにはどうすればいいでしょうか。各界の論客に時事問題を独自の視点で斬ってもらい、考えるヒントを提供するのがこの企画の狙いです。