あいりん地区“中国人ガールズバー”急増 やりたい放題…住民とトラブルも

2015.10.12 17:10

 全国有数の日雇い労働者の街・大阪市西成区の「あいりん地区」周辺で、若い中国人女性がカウンター越しに接客する「カラオケ居酒屋」が増えている。3年ほど前から出店攻勢が続き、今や約100軒に上る。中国人女性の人懐こさや安価で楽しめる手軽さが人気を呼び、“あいりんのガールズバー”としてすっかり定着した。一方、生活習慣の違いなどから地元住民とのトラブルも目立ち、関係者は街の行く末を懸念している。(矢田幸己)

 空き店舗に続々

 9月下旬の週末の夜、萩之茶屋本通商店街の一角にある居酒屋。キャップ帽をかぶった男性(53)が、カウンター越しにアルバイトの中国人女性(23)の手に触れ始めた。女性から片言の日本語で注意されても、ほろ酔いの男性が意に介す様子はない。

 あいりんで長年暮らしているという男性は、1年半前の開店当初から通い詰めるという。理由は「女の子のレベルが高いから」。にやりと笑った男性はこう続けた。

 「けどな、あいりんはもう中国人に乗っ取られているようなもんや」

 同商店街や周辺の動物園前1番街(飛田本通商店街)、今池本通商店会などを歩けば「呑(の)んで、歌って、楽しんで」など似た文言、デザインの看板が目につく。飲食にカラオケ付きで3千円前後。客の多くは生活保護受給者か日雇い労働者だ。

 西成区商店会連盟会長の村井康夫さん(64)によると、店は約3年前から増え出した。中国人が経営するあいりんの不動産会社が、商店街の空き店舗を次々と買い取り、中国人コミュニティーの人脈で店の経営者を募ったという。中国人留学生がアルバイトで働く店も多いらしい。

 村井さんは「店舗跡地の買い手が見つかれば、後継者不足に悩む商店街のにぎわいにつながる」と話す。

 「やりたい放題」

 ただ、地元住民にとって中国人女性の居酒屋は悩みの種でもある。客引き行為や大音量のカラオケ、ごみの不始末…。今池本通商店会協同組合理事長の岸本人志さん(66)は「中国人女性の居酒屋は規範意識が乏しい。やりたい放題だ」と嘆く。酔客相手に堂々と料金をぼったくろうとする悪質な店もあった。

 カラオケの音が漏れる店のほとんどは、費用面の問題からか防音ドアでなく、単なるガラス戸。客さえいれば、明け方近くまで営業を続けているとみられ、周辺住民にとって騒音はとりわけ頭の痛い問題という。

 岸本さんは「注意しても『ニホンゴ、ワカリマセン』と言い逃れる。月々の商店会の会費(約6千円)を払わないぞ、といわれたこともあった」と明かす。

 中国人女性の居酒屋の急増で、街並みが激変したことを懸念する声も少なくない。今後は「コミュニケーションを取りながら、地道に信頼関係を築いていくしかない」(岸本さん)のが実情だ。

 生活保護狙い?

 行政や警察も見過ごしているわけではない。9月には、大阪市環境管理課や市保健所が、管轄の大阪府警西成署と合同で87軒への立ち入り検査を実施した。店員の在留資格を含め明らかな法律違反はなかったが、騒音・衛生面から指導を継続するという。

 あいりんでなぜ、中国人女性の居酒屋が爆発的に増えたのか、府警としては今一つ理由をつかみきれていないが、「(生活保護)受給者相手の営業なら、食いっぱぐれることはなく、一定の売り上げが見込めるからではないか」との見方が出ている。

 近隣住民とのトラブルが重なり、暴力団や犯罪組織と結びつくなどすれば、治安の悪化が懸念されることから府警は警戒している。

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