【生かせ!知財ビジネス】IoT関連の特許分類記号で一括検索可能に

2016.11.25 05:00

 特許庁は世界で初めて、IoT(モノのインターネット化)関連技術の特許分類記号「ZIT」を設け、新規の特許出願や特許登録の分類作業の際に付与する。過去の特許への付与は検討中だが、新規分は早ければ来年1月中旬以降、全技術分野で使われるIoT関連技術の特許公報を特許情報検索サイト「J-platpat」などで、横断的に一括検索できるようになる。

 ZITの狙いと効用について、柳澤智也・調整課審査企画室長は「多くの分野にまたがるIoT関連技術の動向を把握したいというニーズが国内で高まっている。ZITによって、IoT関連で他社の特許出願や取得の情報を効率的に得られ、出願動向や権利化の可能性が把握しやすくなり、自社の技術開発や特許出願、提携の戦略に役立てられるようになる」と説明する。

 ある機械メーカーの知的財産部長は「センサーとの通信、監視・制御、故障予知などどんな技術が対象か、部品、装置、応用システムなどどういったアプリケーションが対象かも分かるようにすれば、ZITはより有効に使えるようになる」と要望する。また、電機メーカーの特許検索指導員は「実はIoTの流れの中に、ICT(情報通信技術)業界以外の異業種や中堅企業に特許出願のチャンスが生まれている。ZITの登場でICTの知識がなくても特許情報が容易に得られれば、チャンスを拡大できる可能性がある」と予見する。

 一方、国際的に特許などの調査分析を行うランドンIP合同会社(東京都港区)の野崎篤志・日本事業統括部長は「ICTを駆使して製造業の革新を目指すインダストリー4.0や、IoTの産業向け国際規格団体IIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)などの国際連携をベースに、日本に先行してIoTに取り組む欧米企業の動向を網羅的に補足することは、ZITだけではできない」とした上で「IoTでは海外動向を注視していく必要があり、特許に加え、報道、市場などの海外情報も重要」とZIT以外の活用を促す。

 すでに特許庁は五大特許庁(日米欧中韓、IP5)にZIT同様の統一分類導入を提案しており、世界知的所有権機関(WIPO)を通じて国際特許分類での正式導入を図っていく考えだ。順調にいけば2018年度の採用が見込まれる。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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