情報収集衛星 きょう午後、種子島で打ち上げ 北朝鮮の核・ミサイル施設など監視 「米朝会談の影響ない」と地元

2018.6.12 09:17

 事実上の偵察衛星である情報収集衛星のレーダー6号機が12日午後1時20分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる。同日に開催される史上初の米朝首脳会談の陰で、日本の安全保障体制を固める重要な打ち上げとなり、地元も応援ムードに包まれている。

 情報収集衛星は、平成10年に北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン1号」を発射し、日本上空を飛び越えたことから導入された。現在は北朝鮮の核やミサイル施設に加え、積極的な海洋進出を続ける中国の艦船を見張ることも大きな目的だ。

 電波を使って夜間や曇りでも地上をモノクロで撮影できるレーダー衛星と、デジタルカメラのようなセンサーを使い、日中の晴天時にカラーで撮影できる光学衛星で構成。4基あれば地上のどこでも1日1回撮影でき、現在は設計上の寿命が過ぎたものも含めて光学3基、レーダー4基の計7基が稼働している。最も新しい衛星の解像度はいずれも1メートル以下とされる。

 今回のレーダー6号機は設計寿命が過ぎた4号機の後継機。衛星を搭載したH2Aロケット39号機は11日深夜、大型ロケット組立棟から姿を現し、台車に載せられて約480メートル離れた発射台までゆっくりと移動した。

 H2Aを製造し、打ち上げ業務も担う三菱重工業の関係者は「機体に問題はなく、作業は順調に進んでいる」と話す。機体に燃料の液体水素を注入すると、万一の爆発に備え、発射台から半径3キロ以内が原則立ち入り禁止となる。

 打ち上げは当初、11日の予定だったが、台風5号の接近に伴う天候の悪化で延期されていた。12日午後1時ごろの種子島の天気予報は晴れで、三菱重工関係者は「打ち上げに支障はない」としている。

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 打ち上げを間近に控え、宇宙センターのおひざ元である南種子町では、三菱重工をはじめとした宇宙関連企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者らの姿が目立つ。

 町中には打ち上げの成功を祈る看板や横断幕、のぼりが掲げられ、応援ムードが高まっている。町は打ち上げに合わせ、4カ所の見学場所に職員ら約40人を派遣し、混雑に備える。職員の一人は「米朝首脳会談の影響は特にない。情報収集衛星の打ち上げ成功を願っている」と話す。

 今年は昭和43年に種子島で初めてロケットが打ち上げられてからちょうど50年という節目の年だ。日本の宇宙開発を支えてきた南種子町にとって、観光客の増加や宇宙関係者の長期滞在などによる経済波及効果は無視できない副産物だ。税収の約3割は宇宙関連とされる。

 町関係者は「ロケットは町にとって欠かせない大切な存在。今後も共存共栄しながら、島を発展させていきたい」と話す。

 JAXAは今回、保安上の理由などから、インターネット上で打ち上げを生中継するJAXA放送を行わない。産経ニュースは現地取材で打ち上げの成否を速報する。

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