【太陽の昇る国へ】日本は台湾と政府間の関係構築を 幸福実現党党首・釈量子

2019.3.15 05:00

 --中国の李克強首相が5日、全国人民代表大会にて台湾の独立を断固阻止するとの旨を発言しています

 先日、台湾の蔡英文総統が産経新聞の単独取材に応じた際、「台湾は地政学上、中国が太平洋に出入りする要衝」であり、「台湾と日本は同じ脅威に直面している」として、安全保障協力などを進めることを念頭に、日本政府との対話に強い意欲を示していました。

 今年1月には、中国の習近平国家主席が、「台湾同胞に告げる書」40周年記念イベントで、一国二制度の具体化に向けた政治対話を台湾に迫っており、武力行使を排除しないことも強調しています。今回の李首相の発言は、習主席が示した考えを改めて強調し、蔡英文総統を牽制(けんせい)する形となりました。

 日本のシーレーンは台湾近海を通り、台湾が中国にのみ込まれるようなことがあれば、日本の海上輸送が中国によって封鎖され、エネルギー調達などが極めて危険な状態に陥ることになります。蔡総統が言及している通り、中国の動きは、台湾に自由の危機をもたらすばかりか、まさに日本の安全保障にも直結する問題となっているのです。

 --日台間が持つべき関係とは

 日本は1972年、日中共同声明に調印し、中華人民共和国を中国の唯一の政府と承認して、台湾との断交に踏み切りました。米国も79年に米中国交正常化と同時に台湾と断交しています。

 その後、軍事力で圧倒する中国が台湾を併合できなかった背景には、米台が断交したその年、米国が国内法として台湾への武器売却を認める「台湾関係法」を成立させたことにあります。同法により、両者は「事実上の軍事同盟下にある」とも言われていますが、95年から96年にかけて中台間での軍事的緊張が高まった「台湾海峡危機」の際に空母2隻を派遣させたことにも象徴されるように、米国は中国の軍事圧力を抑止してきました。

 しかし近年は、中国が国力、軍事力を強大化させて、南シナ海などへの圧力を一層強め、中国による台湾の併合も現実味を帯びる状況となりました。こうした中、米国トランプ政権も台湾への関与を強めており、米台の閣僚、政府高官の相互訪問を可能にする台湾旅行法、台湾への武器売却を促進させるアジア再保証イニシアチブ法を成立させています。

 中国による台湾併合は日本の安全に直結していることから、日本は、米国以上に台湾との関係強化の必要性に迫られています。まずは、中国経済に台湾がのみ込まれないように日台経済を密接にしつつ、台湾の平和も考えて日米同盟を強化することが肝要です。

 もう一段踏み込んで、FTA(自由貿易協定)交渉や自衛隊と台湾軍との協議を進めるには、日本の国会においても、79年の米国と同じように、台湾関係法制定の流れを作ることが大切ではないでしょうか。

 --香港は、実質的に「一国一・五制度」の状況下にあるとの指摘もある

 香港は97年に英国から中国に返還されるにあたって、50年間は中国とは異なる制度を維持する一国二制度をとることが約束されてはいますが、ここ数年は中国が香港への圧力を強めています。独立派候補が議会で立候補できなくなるなど、民主主義に制約が設けられつつあるのです。

 中国が台湾に一国二制度を設けると約束したとしても、そのようなものは絵空事にしかすぎません。

 中国の帝国主義は一種の全体主義と位置づけられますが、全体主義にとって、人間は国家に奉仕する手段にしかすぎません。一方で、民主主義、自由主義、信仰のある国家像は、人間にとって最も重要な基本的人権に支えられたものです。これらの下では、人間の幸福そのものが目的であり、国や官僚などは国民に奉仕しなければなりません。台湾では今、こうした制度が根本的に覆される恐れがあるのです。

 台湾を中国化するのではなく、台湾が重んずる自由、民主、信仰といった考え方を中国本土に広げ、中国を台湾化することこそが、中国の人民の幸福につながると信じるものです。

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【プロフィル】釈量子

 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。国学院大学文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。

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