重症の脳梗塞起こす「心房細動」 高齢化で増加、出張検診も登場

 

 心臓の不整脈の一種「心房細動」。動悸(どうき)、息切れ、めまいなどの症状を引き起こし、重症の脳梗塞(心原性脳塞栓(そくせん)症)を誘発する可能性もある。高齢者ほどリスクが高く、早期発見が必要だが、75歳以上には厚生労働省の特定健診が義務づけられていない。見逃しを防ごうと独自に「心房細動検診」を行う医療機関も登場した。専門家は「検診で発見することが重要」と話している。(坂口至徳)

 80歳以上で10%超

 心房細動とは心房が細かく震えるだけで収縮しなくなり、ばらばらに脈打つような不整脈のこと。心臓全体が規則正しく拍動せず、心房内の血液がよどんでしまい、比較的大きな血栓ができる。

 この血栓が動脈を通って脳の血管に入り込むと、太い血管をふさぎ、心原性脳塞栓症と呼ばれる脳梗塞を引き起こす。脳の損傷の範囲が大きく、死亡率は約20%、寝たきりなど介護が必要な状態になる率は40~50%と高い。巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏らもこの病気になった。

 心房細動の患者数は約80万人、高齢化や食生活の洋風化に伴い年々増加の傾向にあり、潜在患者も含めると80歳以上では10%を超えると推計される。加齢をはじめ、高血圧、心不全などが発症の原因だ。

 早期発見が重要

 長年、臨床研究を続けてきた大阪府立急性期・総合医療センターの福並正剛副院長によると、このような脳梗塞を防ぐには心房細動の早期発見、治療が不可欠だ。ところが、患者の約半数は症状がなく、心電図検査で初めて見つかることも多い。

 その心電図検査も、40歳から74歳までが対象の厚生労働省の特定健診では行われることが多いが、75歳以上の後期高齢者は自主的に健診を受けない限り、見つけにくい。

 このため、同センターは昨年10月から地域の集会所など病院外に出張する集団検診「心房細動検診」を無料で行っている。こうした取り組みは全国初。75歳以上が対象で、これまで4カ所で計約450人の心電図検査などを行ったところ、16人に心房細動が見つかり、そのうち8人は未治療だった。受診者は「心臓の病気が重大な脳梗塞に結びつくとは」と驚いていたという。

 福並副院長は、「まず心房の不整脈と脳梗塞に関係があることを認識してもらうことが必要。また、検診当日に心電図に異常がなくても、長期間、心電図を記録することで分かるケースもある。常に意識しておき、症状が出れば、医師に相談してほしい」と話す。

 脳卒中の医療費は年間1人あたり200万円、介護費用も含めると400万~500万円に上る。検診による心房細動の早期発見は、医療費削減にもつながる。福並副院長は「心房細動に特化した集団検診をユニット化し、地域と連携して広げていきたい」と話している。

 ■心房細動の発見と治療

 自覚症状のない無症候性心房細動を見つけるには、定期検診などで繰り返し心電図を記録するほか、長時間身体に装着して測定する「ホルター心電図」や心房細動が起きたときにだけ記録する携帯型ループ心電計、発作がない時でも診断できる加算心電計を利用する方法もある。

 治療には血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用するが、最近では脳出血の副作用が少なく、食事制限が不要など使いやすい新薬も登場している。また、不整脈が起きている部分にカテーテルの先端を当てて焼く、カテーテルアブレーションという方法もある。