「最期は自宅」へ地域包括ケアシステム 国が整備優遇、増える高齢者住宅

 

 国は今、最期の時を過ごす場所を「病院」「施設」から「自宅」へ移そうとしている。増え続ける高齢者を病院や施設だけで受け入れるには限界があるからだ。「国民の多くが自宅を最期の場にすることを望んでいるのだから、いいことじゃないか」という声が聞こえそうだが、自宅で最期を迎えるには、周囲に何重ものサポート体制が必要で、その整備はまだ初めの一歩を踏み出したに過ぎない。

 1万人単位で連携

 国は、自宅で最期を迎えるためのサポート体制の一つを、人口約1万人を単位とする「地域包括ケアシステム」の構築によって実現していく方針だ。厚生労働省がまとめた「在宅医療・介護あんしん2012」によると、次の5つの取り組みが強化されようとしている。

 (1)医療との連携強化(24時間対応の在宅医療や訪問看護などの強化)(2)介護サービスの強化(特別養護老人ホームなどの緊急整備や、巡回サービスなどの強化)(3)予防の推進(介護状態にならないための取り組み)(4)見守り・宅配など生活支援サービスの確保(認知症の増加などに対応する見守りや財産管理などのサービス整備)(5)高齢者の住まいの整備(サービス付き高齢者住宅の整備)-だ。これらの取り組みによって平成37年を目標に、地域包括ケアシステムが整備されていくことになっている。

 サ高住を100万戸

 高齢者にとって終の棲家(すみか)となる住宅の整備も進んでいる。それまで住んでいる住宅を終の棲家にできれば問題はない。しかし、バリアフリーではなかったり、見守りなどの支援は十分に行き届いていなかったりする。

 そのため、急速に増えているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」だ。60歳以上の単身や夫婦向けの賃貸住宅のことで、バリアフリー構造であることが必須条件。さらに、介護福祉士や看護師など、国が定める資格を持つ専門家が少なくとも日中は施設内に常駐し、住民の生活相談や安否確認に対応する。

 サ高住は「自宅」か「病院・介護施設」という二者択一ではなく、その中間に位置する形態をとっている。サ高住を増やすために国が補助金や税制優遇措置を講じていることもあって、不動産や建設、コンサルティング会社、家電メーカーや鉄道、スーパーなど異業種が続々と参入し、ちょっとした「サ高住ブーム」が起きている。

 サ高住制度が始まった23年から昨年10月末までに約16万戸(5000棟)が整備された。国は37年までに100万戸を整備する方針だ。

 ただし、サ高住は介護施設ではないので、24時間いつでも介護してもらえるわけではない。介護度が高くなったり、認知症になったりすれば、退去しなければならないこともある。介護や医療が必要になった際にどのような対応をしてもらえるのかをよく確認したい。

 自治体も賃貸住宅

 住まいの確保だけなら、自治体やUR都市機構などが運営する高齢者向け賃貸住宅(シルバーハウジング)もある。バリアフリー構造や緊急通報が完備され、スタッフが入居者の生活相談、緊急時対応や安否確認などを担う。

 東京都の場合、入居には所得制限がある。また、都内に3年以上居住する65歳以上の単身者または2人世帯が対象だ。入居者は抽選で決められるが、当選倍率は何十倍、人気の住宅は300倍以上の応募があるという。

 UR都市機構の物件は、介護の必要がない65歳以上で、本人の平均月収が家賃の4倍または33万円以上であれば、原則、先着順で入居できる。

 現段階で介護を必要とせず、1人あるいは夫婦で暮らす高齢者にとっては、シニア向け住宅は安心を享受できる住まいだといえる。ただ、看取(みと)りまでを見据えるのであれば、重度の介護状態になった場合などには、終の棲家にはならない可能性もある。(『終活読本ソナエ』2015年冬号に詳細を掲載)