認知症デイ、小人数でなじみの関係 重度の人も機能改善図る

 

 要介護の人が通いで1日を過ごす通所介護(デイサービス)は、介護サービス利用者の3人に1人が使う人気サービス。内容はさまざまで、重度の人を受け入れるかどうかも事業所による。「認知症対応型通所介護(認知症デイ)」は認知症の人に特化したサービスで、慣れたスタッフが小人数でなじみの関係をつくる。重度の人も落ち着いて過ごすという。(佐藤好美)

 東京都北区のマンションにある認知症デイ「あいゆうデイサービス」。認知症の高齢者らが午前9時ごろから送迎車で集まってくる。この日の利用者は11人。意思疎通の困難な重度の人や若年認知症の人など、年齢も状態もさまざまだ。

 まずは、体温や血圧を測りながら朝の水分補給。落ち着いたころを見計らって、介護福祉士の内田千恵子さんが、利用者に話しかけた。「今日の昼ごはんは、何を作ろうか」。テーブルにはアジの三枚おろし、ホウレンソウ、ジャガイモなど。食材を見せながら、料理を思い起こさせ、献立を決め、一緒に作る。

 「アジ、どうする? 焼く?」

 「照り焼き」

 「フライが好き」

 思いついたメニューに不足の食材があれば、「買い出し部隊」が近所のスーパーに出かける。なんとか決めた献立を、文字の書ける人がホワイトボードに記入。エプロンをして好きな作業を始めた。

 包丁を使うのが好きな女性には、介護福祉士、入野直子さんがニンジンの薄切りを渡していく。女性は1本を扱うのは難しいが、薄切りを千切りにすることはできる。家事に慣れない男性には、ピーラーを渡し、大根の皮むきを指導する。

 利用者がほぼ1日を過ごす通所介護だが、内田さんは「時間をつぶすためのサービスになっているところも多い。調理をするのは、認知症の人の心身や機能を活性化させたいから。生活者としての楽しみや自信を取り戻してもらいたい」と言う。

 ぼんやり動かずにいる女性には、内田さんが「ちょっと、お使いだてしてもいいかしら」と声をかけ、キャベツを洗うよう頼んだ。女性は最近、生活環境が変わり、動かなくなった。歩行が困難になることが懸念され、立ち仕事を頼んだのだ。

 利用者の潜在能力を推し量り、一人一人に何ができるかを考える。要介護4で車いすの男性には、医師やリハビリ専門職の意見も確認し、立つためにどのような訓練ができるかを考える。立てると、生活の質が大きく改善するからだ。

 介護職の処遇が注目され、専門性も問われる。内田さんは「介護職に必要なのは『見立て』」と言う。「褥瘡(じょくそう)のある人のオムツを替えたり、声掛けをしながら食事介助をしたりという技術はもちろん必要。でも、目の前の高齢者が、今できないことでも、どのくらいできるようになる可能性があるかを考え、そのために何をすればいいかを計画する力が必要です」と話す。

 認知症が重度で意思疎通の難しい女性がフライを揚げ、家事に慣れない男性が料理を等分に皿に盛り付ける。この日のメニューはアジフライ、野菜炒め、ジャーマンポテト、ホウレンソウのゴマあえ、ごはん、みそ汁-。ほぼ12時ちょうどに食卓に並んだ。

 ■6割近くが「重度」、定員は12人以下 負担大きく利用者増えず

 認知症デイのプログラムは事業所によって異なり、どこでも調理のプログラムを提供するわけではない。

 共通するのは、認知症の人が落ち着いて過ごせるよう、利用定員が12人以下とこぢんまりしている▽認知症の人への対応で研修を受けたスタッフがいる▽区市町村が指定権限を持つので、利用者は原則区市町村住民に限る-などだ。

 厚生労働省の調べによると、一般の通所介護では、認知症が重度(日常生活自立度III以上)の人は25%弱。だが、認知症デイでは利用者の60%近くが重度の人。着替えや排泄(はいせつ)がうまくできなかったり、ときに大声を出してしまったりする人たち。こうした人が穏やかに暮らすには、介護職の腕が問われる。認知症が重く、通所介護の利用を断られる人もいることを考えると、認知症デイは貴重な存在だ。

 ただ、課題もある。小規模で行われるため、一般の通所介護に比べると、利用者負担が日に100~200円前後高い。利用者負担だけでなく、介護保険の支給限度額を超えてしまう恐れもある。厚労省が行った調査では、「単価が高いので、一般の通所介護を希望する家族が多い」などの回答もあった。利用者がなかなか増えないのが実態だ。

 ■介護職は「生活」の専門家

 国際医療福祉大学院の高橋紘士教授の話「介護職は目利きでないといけない。高齢者や障害者を観察し、それぞれが求める生活の継続に何が必要かを判断し、生活を取り戻す手助けをする。それは、要介護の人が人間を取り戻すことにつながる。だが、実際には、食べさせた、オムツを替えたといった最低限のケアになりがちだ。医師は治療、看護師は療養、リハビリ職は機能向上、ソーシャルワーカーは地域との関わり合い、介護職は生活を取り戻す専門職だ。それができると真の多職種連携が成立し、要介護者の生活の質が上がり、介護する人の負担も減る。だが、介護の専門性が共通理解になっておらず、トレーニングもされていないことが問題だ」