「逃げるは恥だが役に立つ」(甲州・大善寺) ほっとする「ぶどうとワインの寺」

作品をゆく
ドラマ中で森山みくり(新垣結衣)と津崎平匡(星野源)が座った薬師堂の床。若い参拝者が好んで座るのだという

 昨秋放送されたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。俳優の星野源さんと新垣結衣さんが“ビジネス結婚”を演じ、エンディングで主演の新垣さんが披露する「恋ダンス」も大ブームを起こした。

 “ビジネス結婚”から始まったにもかかわらず、2人に恋の予感が始まる第3話の重要な場面に登場したのが山梨県甲州市勝沼町勝沼の柏尾山大善寺。山梨県に現存する最古の建物、金堂「薬師堂」(国宝指定)がある。

 真言宗の古刹(こさつ)。奈良時代に僧の行基が甲斐の国を訪れた。渓谷の大石の上で修行したとき、夢の中にブドウを手に持った薬師如来が現れ、同寺を草創したと伝えられる。

 中央自動車道の勝沼インターチェンジ(IC)を降りて国道20号に出て東京方面に約1500メートル。駐車場を入ると門が見え、脇にブドウ畑がある。

 寺が製造するワイン用ブドウ「マスカット・ベーリーA」などを栽培。自前のブドウ畑を持ち、ワインも製造する全国でも珍しいお寺だ。戦前は多くのブドウ畑を小作農に貸していたという。住職の井上哲秀さん(70)は「農地解放で耕す人がいなくなり、父の代から自分たちで耕作しています」と話す。その後、地域住民と会社を立ち上げワイン醸造を始めた。

 ドラマでは、森山みくり(新垣結衣)と津崎平匡(星野源)が、津崎の同僚の沼田頼綱(古田新太)、後輩の風見涼太(大谷亮平)、みくりの伯母の土屋百合(石田ゆり子)と、ブドウ狩りに出かけて立ち寄った。

 星野さんと新垣さんは、薬師如来像など17体の像が並ぶ薬師堂の中で床に座る。イケメンの風見に嫉妬している津崎だが、みくりは津崎の方が好きだと語りかけるシーン。

 住職の家族は「新垣さんが感情を込められるようにと、撮影スタッフが静かにして緊張感のある雰囲気でした」と明かす。放送直後、週末ともなると以前の約20倍の参拝者が訪れ、今年に入っても若いカップルが多く訪れている。

 別のシーンでは、休憩所の広間で、沼田らが寺のワインを飲むシーンを撮影した。関西出身で都留市に住む山本康平さん(27)はドラマを見て、「あれ、どこなんやろか」とネットで検索し、寺を探し出した。

 妻の優里さん(25)と訪れた。広間でドラマにも映っていたグラスワインの販売の看板を見つけ、優里さんは「あー、ここや!」と感動していた。

 当時のエピソードを住職の妻、法子さん(66)は「新垣さんは撮影以外でも雰囲気のある方。星野さんは爽やかな好青年。古田さんはタバコの吸い方がとても格好が良かった」と振り返った。

 帰り際、入り口をよく見ると「ぶどう薬師 史跡民宿」という看板があった。ここは宿泊と食事ができるのだ。予約で精進料理が食べられるほか、山梨名物のほうとうもある。明るい住職の家族が優しく迎えてくれる。津崎も言っていた「気持ちが落ち着く」寺だった。

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 ■「逃げるは恥だが役に立つ」 平成28年10月~12月、TBS系で放送された漫画を原作としたコメディータッチのラブドラマ。派遣切りにあった女性が就職として「雇用主と従業員」という“ビジネス結婚”をし、友人たちに本当の結婚と思ってもらおうと、互いに親近感を出そうとしているうちに、本当の恋愛感情が芽生えてくる-というストーリー。星野源が歌った主題歌の「恋」と、この曲を用いたエンディングの「恋ダンス」がブームに。