今なお世界を牽引する英国の戦略 『ユニオンジャックの矢 大英帝国のネットワーク戦略』

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『ユニオンジャックの矢大英帝国のネットワーク戦略』

 意外かもしれませんが、英国の高級車として有名なロールスロイスもジャガーも、既に国外企業の傘下に入ってしまいました。日本のトヨタが同様の道をたどることを想像してください。衝撃の大きさが実感でき、英国の製造業が衰退の一途をたどっていることが分かります。

 でも、英国は世界に厳然たる影響力を保ち得ている。それはなぜか?

 キーワードは「ユニオンジャックの矢」と呼ぶネットワーク。ロンドンを起点に一直線につながる、ドバイ、ベンガルール、シンガポール、シドニー。英国の植民地であった国々は、現代では世界有数の金融、ITの拠点で、人材、資源の宝庫です。英国はこのネットワークを指揮する経営企画本部の役割を担い、膨大なマネー・情報を動かしているのです。これこそが真の英国の姿で、世界を牽引(けんいん)し続ける秘訣(ひけつ)です。

 また、その国の姿は歴史が物語ります。本書では、第一線で世界に関わり続ける著者の経験(ミクロ)と、5万冊を超す文献から吸収した世界史(マクロ)双方の視点から英国を立体化。加えて、40年にもわたり英国観察を続けた成果から日本と英国の関係性をひもとき、今の日本人が何を学び取るべきかを示します。

 本書は、表層だけを見ても分からない世界の動きをあぶり出すことを目指しました。自分と違った視点を得ることは、いつ、なにが起きてもおかしくない時代を生き抜く知恵として必ず役立つと思います。(寺島実郎著/NHK出版・1600円+税)(NHK出版編集局 白川貴浩)