虫歯や歯周病予防の乳酸菌配合

ビジネスのつぼ
UHAデンタクリアタブレットの発表会で写真撮影に応じる、三井物産の深谷卓司ビジネス推進部長、広島大大学院医歯薬保健学研究科の二川浩樹教授、UHA味覚糖の松川泰治執行役員(左から)=6月1日、東京都港区

 ■三井物産、タブレット菓子「UHA デンタクリア」

 お菓子を食べて虫歯や歯周病を予防できたら-。子供なら一度は夢見るお菓子が、製菓大手のUHA味覚糖(大阪市中央区)から5月から順次発売されている。口の中の悪玉菌だけを退治し、虫歯や歯周病を予防する乳酸菌「L8020」を配合したタブレット菓子「UHA デンタクリア タブレット」だ。三井物産が、大学の研究室に“眠っていた”乳酸菌の特許を発掘。大学発の乳酸菌技術と、消費者目線でおいしさを追求する菓子メーカーをマッチングし、商品化を後押しした。

 ◆食べるだけで口のケア

 コンビニエンスストア向けは、ヨーグルトとクリアミント風味の2種(13グラム入り、希望小売価格は198円)を販売している。ポケットに入るサイズで、口腔(こうくう)ケアができるのがセールスポイントだ。

 「いくら治療しても、虫歯が再発してしまう」

 広島大大学院医歯薬保健学研究科の二川浩樹教授によると、乳酸菌研究のきっかけは、障害者施設での歯科医検診の現場だった。

 健康な人にとって、日々の歯磨きが虫歯の最良の予防策だが、障害者や介護が必要な人にとってはハードルが高い。二川教授は「歯磨きができなくても、食べるだけで口の中のケアができないか」と、2002年頃、虫歯や歯周病予防に役立つ乳酸菌の研究を始めた。

 最初に注目したのは天然の乳酸菌として知られているロイテリ菌。乳業メーカーのチチヤス(広島県廿日市市)などと虫歯予防効果を共同研究したが、当時はロイテリ菌の研究成果を特許申請しなかったため、後にスウェーデン企業が全ての特許を保有。研究を中断せざるを得ず、二川教授には悔しさだけが残った。

 だが、二川教授は諦めなかった。「歯磨きをあまりしないが、虫歯にならない人」に着目。彼らのデータを集め、口腔内に共通して存在する42菌株を特定、ゲノム解析など最先端技術を活用して虫歯予防につながる3菌株を見つけた。

 L8020と命名された乳酸菌の特長は、善玉菌はそのままで虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌だけを退治し、歯周病菌の持つ毒素も押さえ込めることだ。虫歯予防だけならロイテリ菌や甘味料「キシリトール」も効果があるが、L8020は風味も良く、食品に添加するのに最適だった。

 口腔内に存在する病原菌について、二川教授は「口は災いのもと」と持論を展開する。なかでも、歯周病菌は全身疾患の元凶で、口から血流に乗って全身を駆けめぐる。アルツハイマー病や糖尿病、がん、誤嚥(ごえん)性肺炎の発症リスクを高めるとされる。二川教授にとって、歯周病菌などの悪玉菌だけを退治するL8020は自信作だった。

 ロイテリ菌の反省もあり、二川教授は同級生で中国鉄管継手(広島市)社長の高田祐司氏に頼み込み、特許を管理する広島大発のベンチャー「キャンパスメディコ」を09年に立ち上げた。

 まずはヨーグルトで商品化しようと、大学の知財部門を通じて乳業メーカーに打診したが、相手にされない状況が続いた。ようやく、高田氏のつてで、四国乳業(愛媛県東温市)に直談判して効果をアピールし、10年10月にヨーグルト製品を発売した。ただ、その後は本業の研究に忙殺され、L8020の商品化を本格的に進められない状態が続いた。

 ちょうどその頃、重症の歯周病を患った三井物産関西支社の社員が、四国乳業のヨーグルトの評判を耳にした。この社員は半信半疑ながらも半年間続けると、検診で医者も驚くほど改善効果があり、「ビジネスにできないか」と東京本社に掛け合ったのだ。

 ◆休眠特許で地方活性

 三井物産では13年から、休眠特許を活用して地方活性化に貢献しようという知財ビジネスの取り組みが始まっていた。同社の深谷卓司ビジネス推進部長は「技術を光らせ、地域産業振興に貢献できる、知財ビジネス発掘の第1弾になった」と話す。日本の国立大学は技術こそあるが、束になっても米スタンフォード大の特許収入に及ばない現状を打開したいとの思いもあった。

 すぐに二川教授と連絡を取り、14年6月、L8020のライセンス業務の契約を結んだ。取引先の一つであるUHA味覚糖との連携が、とんとん拍子に進んだ。同社の松川泰治執行役員は「お菓子を通じて口腔内を健康にするオーラルケア商品の強化が打ち出された絶好のタイミングだった」と振り返る。

 L8020の商品化の第1弾として、品質が安定しやすいタブレット菓子が発売された。UHA味覚糖は今後、キャンディーや市場が拡大しているグミにも広げたいと意気込む。

 量産化となれば商社の出番も増える。三井物産は、原料調達や物流などのネットワークを活用し、安定供給を側面で支援し、将来の海外展開も視野に入れる。(上原すみ子)

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 ≪企業NOW≫

 ■鉄道事業 英通勤路線の運営権取得

 三井物産は今月10日、JR東日本とオランダ国鉄の英国子会社と組み、英国中部の通勤路線「ウェストミッドランズ」の運営権を英運輸省から取得した。JR東日本が海外の鉄道運営に参画するのは初で、12月から事業を開始する。

 三井物産は今年1月にも、今回のパートナーのアベリオ・トランスポート・グループ(アベリオUK)から同社が運営するロンドン中心部と南東部などを結ぶ「イーストアングリア」の運営権を一部取得しており、今回で2件目。3社連合は、これに続く英国内の別路線にも応札中だ。

 日本のJRの参画で定時運行や新車両投入による輸送力増強、サービス改善などで効率運営に貢献できるのが強みだ。

 英国は地域路線ごとに8~10年ごとに競争入札する「フランチャイズ制」を導入しており、日本の強みを生かせると判断した。

 三井物産の車両輸出などの歴史は古く、日本の新幹線技術の初の輸出で2007年に開業した台湾新幹線でも、三菱重工業など7社連合のリーダーを務めた。

 近年は、鉄道運営事業に乗り出し、ブラジルでも現地大手ゼネコンのオデブレヒトグループなどと旅客鉄道事業に参画し、その後、JR西日本や官民ファンドの海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)も参加した。運営に参画することで日本企業の鉄道システムの受注につながる可能性にも期待している。

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 ■三井物産

 【設立】1947年7月

 【資本金】約3414億円(今年3月31日現在)

 【従業員数】4万2316人(連結、同3月31日現在)

 【主な事業内容】鉄鋼製品、金属資源、機械・輸送システム、化学品、エネルギー、食料、流通事業、ヘルスケア・サービス事業、コンシューマービジネス事業など。

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