タイエリ峡谷鉄道(6)南半球最大級の鉄橋も見どころ! 「鉄道ファンならオフシーズンの冬が狙いめ」元・運転士の車掌が語る鉄道愛

江藤詩文の世界鉄道旅
タイエリ峡谷鉄道の最大の魅力は手付かずの自然(写真はダニーデン鉄道より提供)

 窓を開けると、ひんやりとした透明な風がさっと吹き抜けた。車掌のジュリアンさんいわく、この日の外気はプケランギ駅付近で約7度。ニュージーランド南島は、冬晴れならあまり寒さが厳しくないそうだ。雪など天候が理由で運休になることはほぼないため、タイエリ峡谷鉄道は通年運行。観光客はスケジュールに組み込みやすい。

 一般的には、トレッキングやピクニックを楽しめる夏がトップシーズンだが、鉄道ファンには冬がおすすめ、とジュリアンさんは言う。「夏はお客様が多く混雑してしまいます。冬のほうが鉄道写真をじっくり撮れますよ」。

 観光列車らしく、見どころに差しかかると車内にアナウンスが流れるが、録音を流すのではなく生放送で話すのもジュリアンさんの仕事。沿線を知り尽くしたベテラン車掌ならではの、ライブ感溢れる案内が楽しい。

 かつては運転士として、タイエリ峡谷鉄道を毎日のように運転していた。培われた経験により、今でも体感で速度がわかる。ジュリアンさんの評価では、三菱重工製DJ型ディーゼルエレクトリック機関車はポテンシャルが高いが、レールは木製部分と鉄製部分があり、100年以上前に敷設された木製レールの安全性を考えると、最大時速は70km(鉄製部分は80km)程度に抑えるのが望ましいとか。タイエリ峡谷鉄道は、のんびりと車窓を楽しむシーニックトレインなので、通常は時速40kmほどでのんびり走行している。

 19世紀のニュージーランドの土木技術の結晶とも称されるタイエリ峡谷鉄道。車窓に広がるパノラマに目を奪われがちだが、高架橋やトンネルといった建築物も趣きがある。石造りの高架橋のほか、錬鉄製の構造物としては南半球最大といわれる大鉄橋も通過する。ナントカと煙は…と言われるように、私は高いところが大好きなので、大鉄橋に差しかかると連結部に飛び出し、足元から真下をのぞいてスリルを楽しんだ。高所恐怖症の人なら、歩けなくなってしまうかもしれない。

 

 定刻から15分ほど遅れて、タイエリ峡谷鉄道はダニーデン駅に到着した。冬のニュージーランド南島は日が短い。華麗なるダニーデン駅舎は、暮れなずむ空を背景に、背筋がぞくっとするほどの美しさを放っていた。

■取材協力:ニュージーランド航空ニュージーランド政府観光局

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら