なぜお金持ちは左手にグラスを持つのか? 庶民が知らない富裕層のマナー

提供:PRESIDENT Online
(プレジデント)

 「金持ち喧嘩せず」「汚い家に金持ちなし」は本当か? お金持ちのマナーは庶民のマナーとどう違うのか? お金持ちと接する機会が多い会計士に話を聞いた。

 会計士という仕事がら、富裕層の方と接する機会が多くあるのですが、富裕層の方々の一番の特徴は、明るくていつもニコニコしていることです。加えて、非常に好奇心旺盛で、あれもこれも「面白いなあ」と思っているので、自然と笑顔になるのでしょう。

 とてもオシャレで、身なりに気をつかうことも共通項です。といっても、単に高い服を着ているわけではありません。高いものとユニクロの服を組み合わせるなど上手に着こなす人が多いです。

 身なりに気をつかうのは、「自分をよく見せよう」という気持ちからではなく、「不快な印象を与えないようにしよう」という意識が強いようです。見た目が若い人も多く、年齢が高くなればなるほど、見た目と実年齢との差が大きくなるように感じます。

 パーティーでは左手でグラスを持つ

 若く見える理由のひとつは、姿勢がいいこと。みなさん、背筋をしゃんと伸ばしています。そして若い世代が好むものもよく知っています。例えば、カラオケにご一緒すると、昔の歌も歌うけれど、若い世代が好む歌も知っている。柔軟性が高いことも、富裕層の方々に共通しています。「いい」と思うことは、相手の年齢を問わずアドバイスに耳を傾け、積極的に取り入れようとする。私自身、アドバイスを求められてお答えしたところ、翌日には実践されていて本当にビックリしたことが何度もあります。

 別れ際などに「今日はありがとうございました」と握手をする方が多いのも富裕層に共通する行動です。そのため、パーティーの席では冷たい飲み物は必ず左手で持つ。握手は右手でしますから、そのときに相手が「冷たい」と感じないための心づかいが習慣になっているのでしょう。

 価値を見いだせない買い物はしない

 富裕層の方々は、いつも節約を心がけています。確かに、大きな家に住み、いい車に乗ってはいますが、収入の割に暮らしは質素です。ときには「ちょっとケチだな」と思われることもあるかもしれません。例えば、自動販売機にお金を使わない主義の方が多い。自分が価値を見いだせないものには1円たりとも出さない意識が徹底しているのではないでしょうか。高級な外車に乗るのは見栄を張るためではなく、価値が下がりにくく、中古になってもそれなりの値段で買い取ってもらえるからです。

 お金の貯め方や使い方も庶民とは大きく異なります。庶民の場合、「収入の何%」「月々いくら」など、先に貯める額を決めるのが一般的です。一方、富裕層の方は、先に使う額と目的を決めたうえで残りを貯める。闇雲に貯めることはしません。また、庶民は収入が増えると支出も増やしがちです。ところが、富裕層は自分が満足できる生活ラインを満たしたら、それ以上の出費はしない。収入が増えても支出が一定なので、自然と貯蓄が増えるのです。

 フットワークが軽い方も多く、忙しいにもかかわらず、実にいろいろな場所を旅行しています。その場合も、単に観光地巡りをするのではありません。結果としてビジネスにつながりそうな情報を集め、新たな事業につなげる糸口を探してきます。人との出会いも豊富です。「空港のラウンジで知り合った人と仲良くなって、現地を案内してもらった」という話をよく耳にします。一期一会の出会いを非常に大切にするからでしょう。私のような年下の相手であっても、名刺交換をしていただいた後、こちらが出したメールにすぐ返信が来る。私に限らず、出会ったすべての人に対して、当然のこととしてやっているのでしょう。

 スマートに会計できる行きつけの店がある

 フットワークが軽いのは、旅行に限りません。新しいビジネスを始めるときには、関連法規を調べたり、市場調査をするなど最低限の準備はするものの、基本的には「まず行動してみる」人が多い。「やってみなければわからないことが多いから」です。例えば、ベンチャー企業は、過去の取引実績がないと銀行に法人口座を開設しにくかったり、不動産を借りにくかったりすることがあります。そういうことはあまり本に書かれていない。それは一歩踏み出してみなければわからないのです。だから、最悪の場合の損失額を見積もり、仮にそれが一億円ならば、一億円を損する価値がある一歩かどうかを判断する。踏み出す価値があるなら、失敗を恐れずやってみる。庶民と富裕層とでは「失敗」という言葉の意味合いが違うのかもしれません。

 家族を大切にし、本当に必要なお付き合い以外は外食をしない方も多い。外食する場合は、相手にごちそうすることが当たり前です。その場合も洗面所に立つふりをして会計を済ませるなど、相手に気をつかわせないようスマートに支払う。店員が自分のところに請求書を持ってくるよう、あらかじめ打ち合わせることも多いようです。そういった気配りができる「行きつけの店」を持っていますし、それができないお店には二度と行かない。お金を払う価値がない相手とも二度と食事をしない。そのあたりの価値判断がシビアで厳しいのも富裕層ならではです。

 公認会計士 平林亮子(ひらばやし・りょうこ)

 1975年、千葉県生まれ。お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、大手監査法人を経て独立。現在は経営コンサルタントとして活躍しながら、大学やセミナーで講師を務める。著書に『お金が貯まる5つの習慣』(幻冬舎新書)などがある。

 (公認会計士 平林 亮子 構成=大山弘子 撮影=坂本道浩 写真=PIXTA)