あなたも「カウボーイ」になろう ツアーが脱サラシニア世代に人気

 
カナダでカウボーイを体験した前田将多さん(中央)。「壮大さが魅力です」と話す

 アメリカ西部開拓時代の象徴といえばカウボーイ。悠然と馬にまたがり、荒野を駆け抜ける姿は、西部劇などでなじみ深い。広大な大地と自然に身を委ねるカウボーイの生き方が今、改めて日本人を魅了している。元気なシニア世代をターゲットに、“カウボーイ”を組み込んだ海外旅行が登場したり、脱サラしてカウボーイになり、体験談を出版した人も。その奥深い魅力を聞いた。(木村郁子)

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 現在もアメリカやカナダなどで、馬や牛を相手に牧畜に従事するカウボーイは、子供たちの憧れの職業という。

 「まるで西部劇の世界」「日常では味わえない高揚感」。大手旅行会社「エイチ・アイ・エス(HIS)」は今年7月、こんなキャッチコピーで、カナダのカウボーイツアーを企画した。100年あまりの歴史を誇るカルガリーの祭典「カルガリースタンピード」は、10日間で100万人以上が訪れる一大イベント。4頭立ての馬車で疾走するレースや、暴れ馬を乗りこなすロデオなどがあり、各地のカウボーイが賞金をかけた真剣勝負に、参加者は酔いしれた。

 「日本の旅行会社で、カウボーイを組み込んだツアーは初めて」と話すのは、同社広報室の宇佐美加奈さん。カナダ旅行といえば、カナディアンロッキーのトレッキングやナイアガラの滝見学などが定番だが、さらに付加価値をと考えた。「カウボーイに興味があるアクティブシニア層の参加も多かった。来年も展開したい」と手応えを話す。

 ◆価値観も一変

 エリートサラリーマンから一転、単身で北米に渡った人もいる。奈良市在住の前田将多さん(42)は平成27年、大手広告代理店「電通」を退職し、カナダ西部のサスカチュワン州レジェイナに3カ月間滞在。学生時代からの夢だったカウボーイとして牧場で働いた。

 牧場は、8千エーカー(約3200ヘクタール)で東京ドーム約700個分に相当する広さ。現地では、牛を管理しながら穀物を育て、餌となる牧草を刈り取って1メートル以上ある巨大な束にまとめる作業に取り組んだ。

 カウボーイの仕事は開拓時代とは異なり、現在では移動も車に乗ることが多いが、昔ながらの作業もある。子牛に焼印を押すブランディングは、馬に乗ってロープを操り、暴れる子牛を押さえて牧場の紋として鉄の鋳型を焼き付ける。

 夜明けとともに起き、日暮れとともに仕事を終える-。残業が深夜に及ぶことも多かったサラリーマン時代とは、暮らしも価値観も一変した。「カウボーイは、家畜と土地を守り孫子の代まで継承することが仕事。その壮大さは、あくせく働く都会にはなかった」。帰国後の今年6月、こうした体験を「カウボーイ・サマー」(旅と思索社)として出版した。

 ◆プロのロデオ

 旅行や体験にとどまらず、ロデオのプロ「ブルライダー」になったのが、東京都世田谷区の芝原仁一郎さん(46)。カウボーイファッションへの興味から、25歳でカナダに渡った。牧場で1年間働き、30歳で米カリフォルニア州のロデオ大会で賞金を獲得したのを機に、本格的に学んでプロになった。

 ロデオは、暴れる牛や馬に8秒間乗ることが条件。片手でサドルの綱やロープを握ってバランスをとる。「有名選手でも、8秒間を持ちこたえられず、落ちた人は多い」と話す芝原さん自身、3年前に試合で転倒して骨折、引退したが昨年7月に復帰した。選手の多くが20代前半にあって、この決断は周囲を驚かせた。

 「結果は失格だったが、また挑戦しますよ」と芝原さん。カウボーイの底流にある壮大なフロンティア精神は、世代を超えて日本人を引きつけている。