「なんで遅れた」「遅れたくせに」 しつこく文句を言い続ける「粘着バカ」にはこう切り返せ

 
画像はイメージです(Getty Imaes)

ニッポンの謝罪道

 はじめまして。ネットニュース編集者の中川淳一郎と申します。ひたすら毎日ネットばかり見ていますが、ここ2年、非常に顕著になったのが「謝罪を論評する」一般人および、テレビの出演者達です。時にはリスク管理の専門家が出てきて「おじぎの角度がなっていない」と言ったり、「謝罪するにしては、バッチリメイクをし過ぎている」などと言う。テレビのコメンテーターにしても、不倫謝罪会見を見た後、「謝る順番が『CM関係者』→『番組関係者』→『仕事相手』→『ファン』→『世間』となっている。一番謝るべき相手である『自分の妻』と『相手の夫』が除外されているではないか、なっとらん! やり直し!」なんて言う。

 そして、勝手に「良かった不倫謝罪会見・悪かった不倫謝罪会見」などと論評する。これまでの報道やSNSの書き込みなどを見ると、こんな感じでしょうか。

○:三遊亭圓楽(笑いに変えた)、ファンキー加藤(潔く認めた)、宮崎謙介(議員辞職、というけじめのつけ方もセット)、桂文枝(妙な悲壮感が漂っていたうえにもう年齢も年齢、大御所過ぎてレポーターが遠慮した)

×:ベッキー(謝る相手が違った。嘘だらけだった。笑みを浮かべていた)、渡辺謙(笑い出した)、斉藤由貴(嘘をついていた&とにかく意味不明)、山尾志桜里(ペーパーの棒読み)、今井絵理子(嘘ついているのがバレバレ)、橋本健(※今井の相手 汗かき過ぎ、嘘つき過ぎ)

 2016年、私は『謝罪大国ニッポン』(星海社新書)という本を書き、こうした現象のことを「一億総謝罪評論家化」と名付けました。また、企業の謝罪会見の場合は、スーツ姿の男がズラリと並び、頭を一斉に下げる。その時にフラッシュがパチパチと焚かれるところまでがセットになっている。さらにはこの頭を下げる「会社だけではエラいオッサン」連中の中にハゲ頭が一人いると尚良し、といったことも書きました。これぞ「茶道」「剣道」「柔道」などに通じる「謝罪道」であり、日本における謝罪は「型」こそ重要であると指摘したのです。

 本連載では、2週間に1回、印象的だった謝罪会見やら、企業による謝罪文の発表などを「謝罪道」に基づき「評論」を加えていきたいと考えております。もちろん見事なまでの謝罪というのもあるでしょうが、多くの場合、ツッコミを入れたくなってしまうまさに「謝罪評論家」的高みの見物となることでしょう。また、適宜私が過去に行なった、見聞きした謝罪なんかも書いていきます。

「なんで遅れた」「遅れたくせに」 しつこい医師に取った作戦

 さて、初回なので最近自分が行った謝罪について書きます。大したことない謝罪なのですが、相手がとにかくネチネチと攻めてくるので、どうしたものか、と思い、取った作戦がとにかく「平身低頭、謝り続ける」というものです。ここでの基本は「でも……」を一切言わない、という点にあります。何しろ相手は自分に絶対の正義があると考え、しかも自分のことを被害者だと思い、私に全面的に落ち度があると思っている。それに加えて、自分の方が圧倒的に立場が上だと考えているからです。

 私の右腿(もも)には「粉瘤(ふんりゅう)」と呼ばれる腫瘍の一種が26年間ありました。放置していても構わないのですが、年々大きくなっていて、短パンをはいている時などついつい触ってしまうのもストレスになっていました。これを先日手術で取りだしました。人差し指の第一関節大の巨大な粉瘤が取れたのですが、これが入っていた場所は祠(ほこら)のように穴が空きましたが、この部分は縫合しつつ、祠の内部に管を入れてガーゼに血を吸着させます。

 医師は翌日、消毒のために再来院するよう伝えました。しかし、その日私は9時半に仕事に行かなくてはいけないため、病院が開く9時では間に合わないと伝えます。すると「8時40分からオレはいるからその時に来なさい」と言います。それに合わせ、8時39分に病院に着き、受け付けをし、診察室に呼ばれたのは8時44分。すると医師はこう言います。

 「なんで遅れるんだよ! 8時40分と言ったろ! こっちは看護師さんも合わせて全員準備して待っていたというのになんで遅れるんだよ! 8時40分と言ったろ! 約束は守りなさい!」

 これには「ごめんなさい! ごめんなさい! せっかく準備していただいていたのにごめんなさい!」と言いました。ここからも医師の攻撃はやむことがありません。消毒するだけなので短パンをわざわざぬぐ必要はないのかな、と思い、短パンを履いたまま診察台に座ったらこう言われます。

 「今から消毒するのに、なに短パンを履いてるんだ! 遅れたくせに短パン履いたままで診療をさらに遅らせるのか! こっちは早く来て待っていたんだよ! 8時40分にちゃんと来ないのになんだよ!」

 これには再び「ごめんなさい! すぐ脱ぎます!」とそそくさと脱ぎます。そして、診察台にうつ伏せになって、腿に貼られたガーゼなどをはがしてもらう時も医師は「なんで今日は遅れたんだよ! こっちは準備万端。皆早く来てるんだよ! 8時40分って言ったじゃないか!」と言い、私は「ごめんなさい! ごめんなさい!」と続けます。

「患者を診てやってる」 上から目線の相手には反論しても意味がない

 ここで私にも言い分はあります。8時40分に来いと言われたら、それは病院に8時40分に着き、受け付けをしろ、ということだろうよ、と。本来9時開始なのを早めてもらっているのだから、少しでもそのピッタリの時間に病院に着くのが正しいビジネスマンのありようだろ? と。

 しかし、この時の判断としては「ここでいちいちこちらの言い分を言っても意味がない」というものです。こちらとしては「さっさと消毒をしてもらい、抜糸の日までこの医師をエラソーにしておくに限る。そのためには一切口応えをしてはならぬ」という判断をすることを決めました。

 結局この日は最後まで「なんで遅れた!」を言われ続けたのですが、その都度「ごめんなさい!」を言い続けました。そして診察室から出る時は「もう血が出てないだろ!」とにこやかに言われたので「先生の腕がいいからです!」とお世辞まで言い「今日は遅れてすいませんでしたアッー!」と言ったのです。

 基本的にこの医師は「患者を診てやってる」と上から目線になっていますから、その人が私の4分遅れをネチネチと文句を言うのであれば、それに反論しても意味がないのです。こちらは「治してくれればいい」という目的があるだけで、別に一緒に仕事をする相手でもなければ、診療室を出れば一切の関係はなくなるわけです。逆ギレしたい気持ちはあるものの、とにかくペコペコしときゃ穏やかに済むわけで、こんな時はいくらでも頭を下げます。謝罪とはそんな割り切り方をしてもいいと思ってます。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は隔週水曜日。