2009.11.12 07:00
病気を抱えながら自宅で暮らす人たちの療養生活を支援する訪問医療の現場で最近、管理栄養士の姿が目立つ。かかりつけ医と連携し、病院に来られない患者宅を訪問し、食べやすい介護食の調理法や栄養の取り方などをアドバイスする。利用した人からは「口から食べられるようになり、人間らしい生活が戻った」などと好評だ。(清水麻子)
◆何でも食べられる
「お元気でしたか?」。東京都世田谷区を中心に訪問栄養指導を行う管理栄養士、住垣聡子さんは久しぶりに横倉一雄さん(70)=調布市=の元を訪れた。
「おかげさまで大好きなお好み焼きをはじめ、何でも食べられるようになりました」。元気に答える横倉さんだが、約5年前、くも膜下出血で倒れた直後は、ベッドから起き上がるのもままならなかった。
横倉さんを苦しめたのは、普通の食事ができなくなったこと。飲み込む力が弱くなる「嚥下(えんげ)障害」は、くも膜下出血の典型的な後遺症だ。
栄養補給のため、胃に穴を開ける「胃ろう」を装着したが、胃に栄養剤を入れられても全く味はしない。食事という人生最大の楽しみを奪われて沈んでいたころ、通院していたリハビリ病院の紹介で住垣さんに出会った。
住垣さんは40年近く総合病院などで管理栄養士として働いてきたが、定年退職後に訪問栄養指導を行う団体「E-net(いいねっと)」に参加し、訪問活動を始めた。現在はフリーで6カ所の病院と契約を結んでいる。
住垣さんがまず行ったのは、横倉さんの妻、光子さんに介護食作りを指導することだった。光子さんが作った冷たいそうめんゼリーを口に含んだ瞬間、横倉さんはうれしくて言葉が出なかった。