2010.3.9 05:00
□林賢之輔設計事務所 ヨットデザイナー 林賢之輔
地球温暖化が問題となり、エコブームである。セイリングヨットは風の力を利用して走る乗り物だから、もともとエコ商品である。エコポイントをつけてもらいたいくらいだ。
船の歴史が丸木舟から始まるとすると、有史以前からということになる。いつころから帆(セール)を使っていたかも定かではない。考古学者は、帆やマストの現物が出土しないので認めていないが、縄文時代に刃物や武器になる黒曜石の生産地と分布地などの関係から、海上を人力で漕(こ)ぎながら帆を使って移動していたと思われる。縄文人はセイリングしていたのだ。
蒸気機関や内燃機関が発明されるまで、小型のローイングボートや少数の例外を除けば、漁船、商戦、軍艦にいたるまですべて帆船だった。世界各地でさまざまな帆装(リグ)が考案され発展してきたが、ほとんど機械船に駆逐されてしまった。現在では各国の練習帆船や資源保護の観点から意図的に残された帆装漁船などがある。遊びの世界では欧米を中心に、帆船の正当な子孫としてセイリングヨットが生き残り、材料と工法の進歩に伴って発展してきた。公式スピード記録は約50ノット(時速約90キロ)に達している。
私たちが普通に目にするセイリングクルーザーのスピードは、たかだか8ノット程度(時速約15キロ)だが、とても面白いスポーツだ。ちょうど良い風と波が穏やかな好条件下では、初心者でも勘が良ければ数時間で操船することができるが、人より早く走らせるとなると、限りなく難しい。陸から離れて外洋に出かけると、救助車を呼ぶこともできないから、自己責任の世界になる。自分で下した判断の結果が良くても悪くてもすぐに現れ、失敗を重ねて上達する。原点に復帰するような、体力も知力も要求する奥の深い遊びであり、少しおおげさに言えば、地球の営みを肌で感じることができるスポーツである。