【医薬最前線】第1部 ドラッグ・ラグの行方(2)「金の切れ目が命の切れ目」 (1/3ページ)

2010.3.15 09:29

小倉恒子医師。自ら闘病生活を送りながらも、患者の治療にあたる=千葉県松戸市の小倉医院

小倉恒子医師。自ら闘病生活を送りながらも、患者の治療にあたる=千葉県松戸市の小倉医院【拡大】

(1)「薬があるのに使えない」に戻る

 「こういう日が来ることは予想していた」。千葉県松戸市の末期がん患者、小倉恒子さん(57)。昨年11月に受けた検査で黄疸(おうだん)指数が異常な上昇を示していた。乳がんの抗がん剤「TS-1」の副作用だった。

 現役の耳鼻科医でもある小倉さん。跳ね上がった指数が意味するところは十分に理解できる。「来るべき時が来た…。もう使える薬がない」。不安と怒りが押し寄せてきた。

 抗がん剤は、現代のがん治療において最も有効な手段の一つだ。しかし、同じ抗がん剤を使い続けると、がん細胞が薬に「耐性」を持ってしまうという弱点がある。薬を変えながらの治療が強いられる。

 34歳で乳がんが見つかった小倉さん。耐性を持つたびに薬を変え、すでに10種類以上の抗がん剤を使ってきた。そして昨年とうとう国内で使える薬がなくなってしまったのだ。

 でも小倉さんはあきらめてはいない。日本では承認されていないが、海外にはまだ効果の期待できる抗がん剤が残っているからだ。

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 海外で使われている薬が、国内で使えない「ドラッグ・ラグ」。日本人の2人に1人がかかり“国民病”といわれるがん治療にも、暗い影を落としている。

 癌研有明病院新薬開発臨床センターの畠清彦センター長によると、日本では約100種類の抗がん剤が承認されているが、これは世界で使われている半分にすぎない。新薬が使われるのも決まって世界で70~80番目という遅さだ。

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