同文庫は「いきなり文庫」を創刊35年の目玉と位置づけ、ロゴマークも作成。毎月数点ずつ出していくという。
1冊ごとの単価が低い文庫からのスタートに抵抗感を抱く作家もいる。ただ、ある出版社の編集者は「単行本で実績を残せず最終形態の文庫に到達できない作品は数多い。比較的刷り部数の多い文庫で最初に読者に届けるのは作家にとっても悪いチャレンジではない」と指摘する。
文庫で刊行された東野さんの『白銀ジャック』(実業之日本社文庫)が昨年11月に単行本として発売されるなど、慣例とは逆の順序を踏む例も出てきた。
出版ニュース社の清田義昭代表は「文庫はフォーマット(判型)が決まった定期刊行物で、出版社にとっては安く早く出せて書店の棚も確保しやすい利点がある。ただ、多様化を図る場合は『すでに定評のある作品ぞろい』という読者の期待を損なわない微妙なさじ加減が必要だろう」と話している。