生活保護の一種で、運転免許証など就労に必要な資格を得るために国が支給する「技能修得費」について、支出の約4割で受給者が資格取得を諦めるなど、就労に結びついていないことが19日、会計検査院の調査で分かった。雇用情勢の悪化という背景もあるが、受け取った金を流用したり、「なくした」と説明したりする受給者もいた。検査院は厚生労働省に対し、支給後の状況を細かく把握するなど有効活用するよう改善を求めた。
技能修得費は主に各自治体の福祉事務所が就業意思を確認し、必要な資格に応じて1人最大7万2千円(平成22年度)、運転免許証は例外的に最大38万円が支給される。
検査院は21、22年度に23都道府県が支給した1万3550件、約6億9600万円を対象に調査。その結果、3679件分(8757万円)で受給者が資格を得ながら就業できないままで、1269件分(3566万円)では資格を取得していなかった。1人で複数回の支給を受けている受給者もいた。
資格の未修得者のうち「生活費に使ってしまった」「なくしてしまった」など、本来の用途に使わなかったことを認めた受給者が9人。411人は研修などを途中で辞めていることも判明し、「就労支援」という本来の目的からは遠い実態が明らかになった。
検査院は原因として、約6割の福祉事務所が申し立てを受ける際、勤務希望職種などを記入する「計画書」を提出させていなかった点を指摘。支給の必要性が不十分な例があったとしている。
厚労省社会・援護局保護課は「技能取得の目的をきちんと説明し、理解してもらうよう改善する。支給後の状況把握にも努めたい」と話した。