【江藤詩文の世界鉄道旅】ベルギー国鉄(2)旅の記憶をつなぐ力のある建築物…ベルギーを代表する“美しい駅”

2013.12.28 18:00

町のランドマークになっているリエージュ=ギユマン駅。国際列車も停車する、首都ブリュッセルに次ぐ大きな駅だ

町のランドマークになっているリエージュ=ギユマン駅。国際列車も停車する、首都ブリュッセルに次ぐ大きな駅だ【拡大】

  • 近未来的な駅を撮影して、ふと振り返ると、背後にはヨーロッパらしいれんが造りの町並み。新旧の建築物が美しく調和している
  • 駅構内も印象的な空間。エントランスやコンコースなどのデザインも見ごたえがあり、散策が楽しい
  • こちらが1年前に訪れた、スペインのビルバオ空港。カラトラバがはじめて設計した空港だ

「鉄道で旅をしているなら、リエージュを見て帰るべきです」

 なぜならリエージュ=ギユマン駅は、ベルギーいち美しい駅と讃えられているのですから。そう言ったのは、宿泊したホテルのコンシェルジュ。ルートを変更し、ちょっと遠回りしてリエージュに立ち寄った。

 駅に降り立った瞬間、いや、正確には車窓から駅が見え始めたときから、軽い既視感を感じていた。あの、いまにも白い翼を広げて青空へ飛び立つような、いきいきと躍動感のあるフォルムは…。頭のなかのアルバムを急いでめくる。そう、あれはちょうど1年前に旅したスペインのビルバオだ。

 2009年に完成したリエージュ=ギユマン駅の設計を手がけたのは、スペインの建築家サンティアゴ・カラトラバ。綿密な計算に基づいて構成された白い骨のようなフレームと、モダン建築というより“近未来建築”と言いたくなる、独特のアールを描いた、ちょっと不安定で美しい独特のスタイルを持つ彼の作品は、世界中に多くのファンを持つ。「この駅を見るために、多くの建築愛好家が世界各国から集まるのですよ」。駅員が、誇らしげに肩をそびやかす。

 無機質なスチール構造の真っ白な建物なのに、“骨”のあいだから自然光がさんさんと降り注ぎ、空間を温かく彩っている。ちらちらと不規則に踊る光に、軽く眩暈を覚える。スペイン・ビルバオのビルバオ空港やズビズリ橋といったカラトラバ建築の姿とともに、町のざわめきやにおいまで、一度に記憶がよみがえった。

 2013年もさまざまな鉄道に乗り、たくさんの町を訪れた。その多くは、一期一会の出合いだろう。けれども、ふとした瞬間に訪れる“再会”は、旅を重ねる醍醐味のひとつ。カラトラバの駅を眺めながら、この1年の旅をふり返る。

 新しい年も、みなさまと私に、素敵な旅の出合いがもたらされますように。1年間ご愛読ありがとうございました。みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。

■取材協力:レイルヨーロッパフィンエアーベルギー観光局ワロン・ブリュッセル

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。

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