「食」の専門家として学校教育で重要な役割を担う栄養教諭の各都道府県での配置率の格差が最大約20倍に上ることが9日、分かった。ワースト5の上位3自治体を東日本が、ベスト5の上位4自治体は西日本がそれぞれ占め、食育への関心は「西高東低」の傾向がみられる。(村島有紀)
格差は20倍
文部科学省の参考資料によると、47都道府県で栄養教諭の配置率(平成25年4月1日現在、推計)が最も高いのは鹿児島県の約86%。最低は東京都の約4%だった。都内では24年12月、学校給食による食物アレルギーで小学5年の児童が死亡する事故が起きている。
学校給食の献立などを決める学校栄養職員(学校栄養士)は自校調理の場合、児童550人以上に1人などと国が基準を定めている。一方、栄養教諭の配置や採用基準は各都道府県の裁量に任されており、ベスト1の鹿児島県とベスト2の京都府は「正規採用の学校栄養職員は全員を栄養教諭に」の方針で順次、切り替えを推進。176人の栄養教諭がいる京都府教育委員会は「食育の重要性は食育基本法の施行(17年7月)以前から認識していた。行政職の学校栄養職員と教職の栄養教諭では子供に対する接し方が異なる。専門の教諭がいることで食育を進めやすい」と話す。
厳しい基準
これに対し、ワースト1の東京都は採用条件に学校栄養職員12年以上の勤務実績を求めるなどハードルが高い。採用数も少なく、19年度は5人しか採用せず、現在も49人しかいない。都内のある栄養教諭は「市区町村に1、2人しか栄養教諭の配置がない。業務が多く、最近は栄養教諭への転向を希望する栄養士は少なくなった」と打ち明ける。
ワースト2の福島県も採用条件は勤務実績10年以上。県内の栄養教諭の定数は27人だが、志望者不足などから24年度以降は定員を下回っている。「勤務実績10年の職員の多くは結婚し、子育てを優先する時期。勤務先を自宅から通える範囲にするなど配慮し、志願者を増やしたい」(県教育委員会)と話す。
各都道府県で配置率が異なることについて、駒場啓子・全国学校栄養士協議会副会長は「食の安全を含め、食育の重要性は増している。アレルギーや肥満など、個別に対応するためには全校での栄養教諭の配置が理想。各都道府県に今後も配置増を呼び掛けたい」としている。