「サーモンにぎりとしてサケ科の魚を生で食べることができるのは、寄生虫の心配がない養殖のサーモントラウトならでは。多くの人が養殖でない川魚と認識する『ニジマス』の呼び名ではサーモンにぎりと別のものと思うのでは」(中村事務局長)
国内で生産される淡水養殖のニジマスも今は寄生虫の心配がないが、生食用はほとんどが「○○サーモン」の名前で出荷されている。
アブラガニは減少
標準和名の表示しか認められなくなったことでスーパーなどで販売が減ったものにアブラガニがある。タラバガニと外見が似ているアブラガニは、かつて「タラバガニ」「アブラタラバ」の名前で、タラバガニより2割程度安い値段で販売され、「安くておいしい」と人気があった。
しかし平成16年、アブラガニをタラバガニの名前で売ることが景品表示法違反(優良誤認)となり、これをきっかけに標準和名のアブラガニの名前でしか売れなくなった。スーパー関係者は「タラバもアブラも味はそれほど変わらない。でも、アブラガニの名前では聞こえが悪いので売りにくくなった」と打ち明ける。消費者からすれば、安くておいしい食材を買う機会が減ってしまった。
サーモントラウトなどを海外で養殖し、輸入販売しているカマンチャカ(東京都中央区)の三橋平典代表は「事業者は消費者がおいしく感じるような名前をつけて販売してきた。嘘の名前はだめだが、食材としての魚の名前は文化に属するものだけに食品の特性を踏まえたルールを考えてほしい。また、一度決めたものに対しても異議を述べたり再検討したりする場も設けてほしい」と話している。