スマホ生み翻弄される両雄
スマートフォンとタブレットが世の中を急速に変えており、その中心にいるのがアップルとグーグルであることは間違いない。本書はそれらのデバイスが普及していく中での、両社の戦いをテーマとしている。
そこに描かれているのは、スティーブ・ジョブズのようなカリスマが、画期的な技術を引っさげて驚くような製品を作る…という、シンプルなストーリーではない。ジョブズやグーグルのラリー・ページといったトップももちろん登場するが、中心は担当エグゼクティブや中核エンジニアといった実際にプロジェクトを回していく人々の姿だ。企業文化の違いや競合関係ゆえの衝突に翻弄されつつ、iPhoneやAndroidが成長していくさまが泥臭く描かれていく。
ポイントは2003年から05年の間に、複数の人々が同時に「携帯電話の高度化が世界を変える」と発想していたことだ。同時であったがゆえに先陣争いも、その後の法廷闘争を含めた覇権争いもより複雑なものとなった。継続的にこのジャンルを追いかけてきた著者の手によるものだけにその密度は濃く、開発や発売までの経緯について、一般に知られる流れとは異なる発見も多い。