多様な動物をモチーフにした花鳥画で注目を集める若手日本画家、絹谷香菜子さん(29)は、日本におけるアフレスコ画(フレスコ画)の第一人者として日本の洋画壇で活躍してきた幸二さん(71)の次女。美術の世界へ進もうと決めたのは中学2年の頃。幼稚園から大学までエスカレーター式に進める学校に通っていたが、「大学は別の所に行きたい」と思ったのがきっかけだ。
「興味があったのは海や生物に関すること。叔母が海洋学者で自分も、と思ったけど、学者になるほど頭が良くない。海の水の中にいる感覚が好きなのですが、この『自分が良い』と思う感覚が言葉では伝わらない。どうしたら伝わるかと考えたとき、父のように絵で表現するのがいいかも、と思った」
アフレスコ画は石灰と砂をこねたしっくいを壁に塗り、乾き切らないうちに水を含ませた顔料で描く。日本画は天然鉱物を細かく砕いた岩絵の具などを膠(にかわ)で溶いて描く。香菜子さんが日本画を選んだのは、オープンキャンパスで訪れた美大で岩絵の具の色の美しさにひかれたためだ。子供の頃から幸二さんのアトリエで目にしていた鮮やかな色の顔料に通じるものでもあった。