【江藤詩文の世界鉄道旅】タイ鉄道(4)“食堂車”は誰のため?…本場の料理は目の覚める辛さ

2014.7.12 18:00

外観は立派な食堂車。ひと際目をひく色使いで、いやがうえにも期待が高まる

外観は立派な食堂車。ひと際目をひく色使いで、いやがうえにも期待が高まる【拡大】

  • 簡素な調理場。木や石の臼はタイの家庭では欠かせない調理器具で、車内にも常備しているそうだ
  • テーブルクロスを敷いてランチの準備が調った。車内販売よりずっとおいしそう
  • 昼から缶ビールを開けて楽しげなランチタイム。揚げた魚はとくにビールに合う
  • 定刻より約3時間遅れて、列車はついに目的地に到着した

 夜明け前のフアランポーン駅で、出発準備を進める列車の外観を眺めたときから、心を奪われていた。前から4番目の車両。古ぼけてほこりっぽい他の車体とは異なり、鮮やかな黄色の塗装が施され、「レストラン」の文字が誇らしげに輝いている。食堂車だ。

 時計の針は午前11時を回った。そろそろ食堂車も営業を始めるだろう。空腹を抱えていそいそと小走りに向かう。しかし、どうも様子がおかしい。いや、調理はしているのだ。その証拠に、さまざまなハーブやスパイスを潰すトントンというリズミカルな音や、温められたナンプラー(魚醤)のかぐわしい香りが、車両いっぱいに立ちこめている。

 しかしテーブルについている顔ぶれは、売り子に車掌、荷物運び、運転士…。要するに全員が乗務員だ。聞くと、もともとは乗客のための食堂施設だったが、いつのまにかスタッフのために食事をつくる場所に変わってしまったそう。

 青いパパイヤのサラダ「ソムタム」は、木製の臼でニンニクと赤唐辛子をつぶすところからつくり始め、揚げた川魚には熱した香味油をかけ回し、料理当番はみごとな手際で、本格的な料理をつくりあげていく。ソムタムはタイの東北イサーン地方が発祥といわれる郷土料理で、料理当番は東北地方で生まれ育ったという。大ぶりの平皿にタイ米をどっさりよそい、たっぷりの油で揚げるように玉子を焼き上げると、たちまち食事の用意が調った。

 せっかく来たのだから一緒に食べて行け。東南アジアならではのゆるさに甘え、ちゃっかり相伴させてもらう。唐辛子の容赦ない刺激的な辛さと、柑橘果汁のさわやかな酸味のハーモニーが抜群で、涙が出るほど辛いのに箸が止まらない。これを食堂車で食べられたらいいのに…。レストランカーの復活を心から願う。

■取材協力:タイ国政府観光庁

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。

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