【書評倶楽部】せたがや文化財団理事長・永井多恵子 『夜想曲集』 (1/2ページ)

2014.7.13 16:15

 □『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』

 ■人生の放浪者の味わい

 英国ブッカー賞受賞作家カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は臓器を提供するためにつくられたクローン人間の少年少女の話だ。この衝撃的なフィクションを背景に蜷川幸雄演出の舞台は生命を短いものと運命づけられて生きる少年少女たちの青春物語にした。大部の小説をクリアに立体化した倉持裕の脚本にも高い評価が与えられていいだろう。若い出演者たちの好演もあって、本拠地の埼玉から関西までの巡演を終わったところだ。

 そのカズオ・イシグロの短編に「老歌手」(『夜想曲集』所収)というのがある。クローン人間もそうだが、この人の着想は日常的な目線はそのままに、驚くほどの鋭いひらめきをみせる。

 「老歌手」のストーリーはこうだ。

 場所はヴェネチア。若い演奏家の前にアメリカの人気歌手と美しい妻が現れる。…人気といっても今はもう若くないこともあって下降線をたどっており、夫婦は今夜別れるのだという。妻の方は若いころ、ハリウッド近くのレストランで、そこに来るであろう金持ちとの結婚を夢見て働いていた。夢はかなえられて今があり、2人は愛し合っている。そう、今でも。

滑稽さの胡椒をふりかけたような苦味のある話

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