■「ありのまま」に受け入れ
W杯では意外な結果に終わったブラジルのもうひとつの顔を教えてくれる本に出会った。「ジェイチーニョ」とは「やり方、方法」という意味のポルトガル語「ジェイト」に「小ささ、親愛の情」を表す語尾「イーニョ」がついたもの。「ロナウジーニョ」などの人名でなじみ深い。
なにか問題があるとき、多少ルールや法律に触れても、うまく納めてしまう“正攻法でない”解決策のことを、ブラジル人はかわいらしく表現する。たとえば急ぎの行列時、先頭の人と交渉して順番を譲ってもらうなどの「要領のよさ」などのことだ。
詳しい実例は本書に譲るが、そうした「融通」は日本でも利く場合がある。ただ本邦ではこの種の対応はあくまでも「例外措置」であるのに対し、ブラジルではジェイチーニョの名の下、堂々と社会的に認知され、「ブラジル人の才能」と称賛までされる点が大きく違う。「扱いにくい連中だ」と眉をひそめる方もおられよう。たしかに堕落や腐敗につながるケースもあり、ブラジル人にも「ジェイチーニョ」批判派はいる。