午前10時のクック駅。
インディアン・パシフィック号は、給油のために30分ほど停車する。道中は3泊4日もあるというのに、機関車の間近に行けるのは、このとき1回限りしかない。一眼レフを抱えた“撮り鉄”たちが、いそいそと車両から飛び出して行く。
安全のため、乗客は機関車の右側にしか立つことが許されず、線路の上や線路を越えて左側に行くことは禁止されている。希望者は、機関車の前で待機していた係員にカメラを渡し、彼が写真を撮影してくれるしくみだ。手慣れた様子で次々に撮影をこなしていく係員。私の後ろには、杖をついた初老の男性や、乗務員に付き添われた高齢の男性が待っていた。
マイクからカメラを受け取り、客車に戻りかけると、機関車の窓から運転士が顔を出し、手を振っていた。私より先に行った人々が、いっせいにカメラを向けている。乗客へのサービスだろうか。便乗して私もカメラを向けると、運転士でオーストラリア人のダイブが、手招きするではないか。