■国家崩壊につながる危険性
少子化が進行する一方の我が国において、労働力、税、社会保障制度を維持するために、移民の受け入れに解決を求めようという動きがある。
実際、政府も緊急措置として「建設分野における外国人の活用」の拡大を決定し、さらに「入管難民法の改正」と、移民の受け入れに向けて着々と準備を整えつつある。
しかし、移民による人口減対策は、有効に作用するどころか、むしろ受け入れた側の社会、いや国家をも崩壊させかねない事態に陥る可能性が極めて高いことが、本書を一読すればよく分かる。
たとえば、移民は例外なく「集住」する。ゆえに、言語の習得もままならず、生活習慣も変わらない。結果コミュニケーションが必要な仕事には就くことができず、低賃金の単純労働に従事することになる。それがネイティブの職を奪い、賃金の低下を招くと著者は指摘する。
それがいかなる事態に繋(つな)がるかは明白だ。厚労省の報告には、30代の正規就業者の未婚率は30・7%であるのに対して、非正規就業者は75・6%とあるが、安定した雇用とある程度の収入がなければ、子供を持つどころか結婚すらできはしない。まずこの現実を改善せぬうちに、日本が移民の受け入れに走れば、ネイティブは減少し続け、やがて日本のマジョリティーは移民となってしまうだろう。「人手不足とは、働き手の所得が上がっていく環境であり、一般の日本人にとってはこれほどありがたい話はない」と著者は述べる。