■子育てに困難を感じた時に
自閉症やアスペルガー症候群など発達障害がある子供たちの教育相談のため、日本全国を飛びまわる出張カウンセラーの著者。子供やその家族と二人三脚で困難を克服してきた20年以上の経験の中から、心温まる逸話をまとめたのが本書だ。
そもそも、そうした仕事が必要とされることに驚くかもしれない。学校には特別支援学級があるではないか--だが、「他人とのコミュニケーションが苦手」などの、なんらかの発達障害がある子が小学生の15人に1人いるともいわれるなか、一人一人に合わせた支援態勢が整っていないのが現状だ。
そこで「子育てブラックジャック」とも呼ばれる著者の出番となる。「子供が読みが苦手で、教科書を読みたくないから国語は休みたいと言っているんです」--こんな相談が来れば、その子が好きな人気アニメにまつわるヘンテコな文章で練習させ、スモールステップを踏んでから教科書を読むのも好きにさせてしまう。具体的な方法自体は、専門知識なしに真似(まね)しないでと著者も繰り返し断っているが、子供に寄り添う姿勢から子育てのヒントを得ることはできるだろう。
知的な遅れや暴力などの問題行動がなくても、「おねしょ」「朝寝坊」「ボヤキ癖」など、持ちかけられる悩みは多種多様で、「うちの子も……」と思い当たる方もいるかもしれない。子育てに少しでも困難を感じたことがある方には、ぜひ手に取ってみてほしい一冊だ。(飛鳥新社・1296円+税)
飛鳥新社編集部 矢島和郎