【書評】『エヴリシング・フロウズ』津村記久子著 (1/2ページ)

2014.9.28 11:33

『エヴリシング・フロウズ』津村記久子著(文芸春秋・1600円+税)

『エヴリシング・フロウズ』津村記久子著(文芸春秋・1600円+税)【拡大】

 ■「すべての人を尊重」の信念

 津村記久子の小説を読むといつも「フェア」(fair)という言葉を思い出す。「公平」とか「公正」と堅く訳されるが、英語では日常的に使われる言葉だ。すべての人がちゃんと扱われること。そんな意味だと思う。

 『エヴリシング・フロウズ』は大阪市南部のある区に住む少年ヒロシの中学3年の1年を扱った小説だ。ヒロシは背が低く、成績もごく普通で目立たない生徒。絵が好きだが、同級の女子が描いためがね橋の絵に衝撃を受け、自信喪失気味。そんなヒロシは3年生のクラス分けの掲示板の前で背の高いヤザワに声をかけられ、席も近かったので友達になる。

 描かれるのは何の誇張も美化もない中学生の日常だ。親との距離、ぎこちない男女の関係、友達とのたわいない会話。読んでいて、自分の中学生時代をまざまざと思い出す。

 事件がいくつか起きる。ヤザワは実は、自転車のロードレースの選手として全国的に注目を浴びる存在だった。それを誇ることもない態度がかえって嫉妬(しっと)され、クラスメートが裏で糸を引く他校生のグループに暴力を振るわれる。

 文化祭の展示で同じグループになった女子・大土居は家庭の問題で悩んでいた。ヒロシは彼女を助けようとする。

ヒロシがこの1年で得たものが消え去ることはない

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。