【書評】『低地』ジュンパ・ラヒリ著、小川高義訳 (1/2ページ)

2014.10.18 13:06

「低地」

「低地」【拡大】

 ■自分自身の記憶のように

 生者と死者は、どちらがより「生きている」だろう。もちろん生者に決まっている。死者が生者より生きているなんて言葉としておかしい。それでも、死ぬはずではなかった誰かを、ある日突然失(な)くした人ならば、死者が時に生者より鮮やかに生きていると、この物語の登場人物たちのように感じるかもしれない。

 ジュンパ・ラヒリ『低地』は、前半部を仲睦(なかむつ)まじいカルカッタの兄弟の物語として描き、後半部ではその弟を亡くした兄と、身重の未亡人となった妻、生まれてくる子の家族の物語を描く。章ごとにおおよそ主語となる人物が書き分けられ、月日がそれぞれの内側からバトンタッチで綴(つづ)られる。誰も彼も、とんでもなく身勝手で、腹立たしくなる。そのくせ、彼らそれぞれの歪(ゆが)みを痛烈に味わってしまう。それほどに的確で、過不足のない感情表現が、細やかに随所に埋めこまれている。大変読みやすく、不必要につっかからなければならない箇所なんてないにも拘(かかわ)らず、読んでいると、まるで長い海岸線を様々(さまざま)の石ころや貝殻や漂着物を拾いながらとぼとぼ歩いているような気分になる。時折、目を上げて遠くの水平線まで視線を投げかける時間がある。そこには、ウダヤンという若くして亡くなった男が、邪魔なくらい輝かしい姿で何も語らず立ちはだかっている。

読み終えた物語も、一種の死者だろうか…

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。