文学やサブカルチャー、政治、宗教と、幅広い領域で評論を紡いだ吉本隆明(1924~2012年)。長篇詩『固有時との対話』から最後の理論的著作『アフリカ的段階について』に至る仕事の全体像に、昭和49年生まれの文芸評論家が迫っている。
言葉と現実との関係を見つめ、現実の変化を超えて力を持つ文学の言葉を探す-。そんな吉本の一貫した姿勢を、「現在」をキーワードに読み解く過程はスリルに富む。〈なにを論じても「無限」を意味するものに向か〉う批評の言葉の美しい軌跡を存分に伝えてくれる力作評論だ。(アーツアンドクラフツ・2200円+税)