【書評】『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン著、野口百合子訳 (1/2ページ)

2014.11.3 11:33

『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン著(創元推理文庫・1040円+税)

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 ■ユニークな爺さん探偵誕生

 新鋭ダニエル・フリードマンが、最高にユニークな爺(じい)さん探偵を誕生させた。

 主人公は、87歳の元刑事、バック・シャッツ。老いてなお頑健…ではない。心臓のバイパス手術を受け、血液サラサラの薬を飲み、忘れないために「記憶帳」を持ち歩く。冒頭は「妄想は認知症の初期症状」という主治医の言葉である。「あいつが怪しい」と思うのは、元刑事の勘か、認知症ゆえか、と全編にわたり悩みつつ事件の真相を追うのだ。

 物語は、バックが捕虜収容所で痛めつけられたナチスの将校が、いまだ生きていると知って始まる。しかも、ナチの略奪金塊を持って逃亡しているという。バックの時代遅れの捜査術は役に立たず、ITに強い孫に助けられて追跡する。金と陰謀のにおいは、2人の行く先々で凄惨(せいさん)な殺人事件を引き寄せていき…。

 本筋は、謎解きの面白さも際立つ復讐譚(ふくしゅうたん)だが、なんといっても主人公バックのキャラクターが魅力。弱々しい年寄り、と見せかけてどっこい、若者など相手にならない「食えない」爺さんバックは、357マグナムを振りまわし、禁煙でもかまわず煙草(たばこ)を吹かす。映画『グラン・トリノ』のクリント・イーストウッドに笑いをのせた感じか。さらに自分がナチスに虐げられたユダヤ人であるにもかかわらず、イスラエル離散民省の役人の名前をもじって、ヘブライ語で「ユダヤちんぽこ」と呼んではばからない。イスラエルがパレスチナを虐げることへの痛烈な皮肉だ。

87歳の皮肉屋バックが「生きる」ことを自分に取り戻す

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