■イメージと現実のギャップ
若き女性によるパリ冒険譚。かいつまんだプロフィルは「アメリカに留学して、就職して、大手シンクタンクを経て国連に入り、英語の他にもスペイン語とフランス語を多少話せる」。国連職員募集2000倍の勝者。しかもソルボンヌ大学で教壇に立つ。「これぞキャリアウーマン」と誰もが思う。でも違う。こう続くのだ-「現在は東京を拠点に、面白い人やモノを探して旅を続ける」。壮絶なギャップ。そう、本書はギャップに満ちている。
あまりの忙しさに転職を考え、ネットで国連の職員募集に応募するもナシのつぶて。それが2年もの空白期間の後(!)、いきなり書類審査合格メールが。「パリに面接に来い」と。以降は怒濤(どとう)の展開だ。
国際色豊かな同僚は、ユーゴ内戦を生き抜いたセルビア人ツワモノ課長を筆頭に白人や黒人、総勢7人。彼らとの交流を通じて、国連に対するイメージと実情とのギャップに読者を引きずり込む。パリ生活も、事前の認識とはほど遠い難関続き。著者も「パリ症候群」という、パリという街が持つ華やかなイメージと現実のギャップに挟まれて鬱になりそうに。だが踏みとどまる-「それは寂しいというより、愉快な気分だった」。