■『歴代首相のおもてなし晩餐会のメニューに秘められた外交戦略』西川恵著
「食べる」ことは、かけがえのない楽しみ。美味(おい)しいだけではなく、作ること、誰と食べるか。お客をもてなすには、どうすれば喜んでもらえるか、国を代表する外交にとって重要な役割を果たしていることがわかる。
「食べる」ことを通して、国際政治が身近に感じられる。この15年余の日本の首相たちの饗宴(きょうえん)外交が、具体的なメニューや秘話で詳しく描かれている。
たとえば、沖縄サミット。「日本でやったことのない趣向の社交晩餐(ばんさん)会を開くことで準備が進んでいた」そうで、各界の第一人者を集めた特別チームが編成された。
主菜に合わせる赤ワインは、8カ国首脳の国のワインがブレンドされたという。飲み物は田崎真也氏の発想だった。この赤ワインは好評で、フランスのシラク大統領に「ブレンドは難しいんだが、これは美味しい」とほめられたとのこと。
首相官邸のもてなしで料理を担当するのは、通常、都内のホテルから。メニューは相手国の大使館を通じて、首脳の好き嫌い、アレルギー、宗教上のことなど、嗜好(しこう)を打診し、洋食、和食、和洋折衷など、希望に応じて準備されてきた。