【著者は語る】小説家・三上延氏 「ビブリア古書堂の事件手帖 6」 (1/2ページ)

2014.12.27 05:00

三上延さん

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 ■太宰治作品のブックガイドに

 『ビブリア古書堂の事件手帖』(以下『ビブリア』)は実在の古書をテーマにしたミステリー小説のシリーズものです。

 これまでの巻でもさまざま、というより雑多な種類の古書を扱ってきましたが、今回の6巻では一冊かけて太宰治の古書を取り上げました。

 太宰治は不思議な作家です。熱狂的なファンが多くいる一方で、嫌いだと公言する人も珍しくありません。

 繊細で内向的な登場人物に自分自身を重ねて作品を愛する読者もいるでしょうし、太宰作品を「弱々しい」と捉えて、作家の乱れた私生活も含めて嫌悪する人もいるようです。ただ、「良い・悪い」という評価だけではなく「好き・嫌い」の感情も強く引き起こしている点で、2つの立場は共通しています。

 太宰は作家と作品、読者と作品との距離感を失わせ、それらを不可分のものと思わせる独特の技術を持っていました。『皮膚と心』のような微妙な感情をすくい上げる独白体、『道化の華』などに見られるメタフィクショナルな仕掛け、そして『人間失格』をはじめ、さまざまな作品に顔を出す太宰本人とおぼしき主人公たち-太宰を太宰たらしめる要素の多くは、意図的な演出であったといえます。

 読者は「太宰治」の持つ妖しい引力にからめ捕られ、作家本人に対してか、作品に対してかも定かではない「好き・嫌い」の世界に引きずり込まれていくのです。

 この『ビブリア』の6巻には太宰の「引力」にあらがえない古書コレクターたちが何人も出てきます。彼らが持つ太宰の希少本についての謎を解く物語ではありますが、同時に太宰を読んだことのない方、昔読んだきり読まなくなってしまった方に向けた、ブックガイドの意味もこめています。

 今一度太宰治という作家を見つめ直すきっかけになることを願ってやみません。(570円(税別) KADOKAWA)

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