【書評】『辰野金吾 美術は建築に応用されざるべからず』 (1/2ページ)

2015.5.2 14:05

『辰野金吾』河上眞理、清水重敦著(ミネルヴァ書房・2500円+税)

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 ■美術と工学 拮抗する建築

 建築は美術と工学の両面から捉えられるが、日本では後者が主流。それは明治以来、建築も含めた西洋文化を合理的かつ実践的な方法論として移植してきたためだろう。それでも建築の美術的側面に目が向けられなかったわけではない。日本銀行本店や東京駅の設計で知られる日本近代建築の先駆者、辰野金吾は、建築の芸術性を重視していた。

 本書は美術史家と建築史家の共同作業により、美術と工学の両面から、辰野金吾のキャリアと建築観を検証する。

 辰野も最初は実質的な工学として建築を学んだ。それが英国留学と仏、伊への旅を通して、建築の芸術性に目覚めたという。そして帰国後、彼が提唱したのが“美術建築”。建築とは全体の構造や様式はもとより、内外細部の装飾や家具調度に至るまで、一貫した美意識を持った理想的空間であり、建築家はさまざまな美術家の力を糾合(きゅうごう)し、それを実現する指揮者。つまり辰野の“美術建築”とは、総合芸術としての建築志向だ。

 それは、19世紀後半に芸術と生活の融合を掲げたウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動や第一次大戦後の「すべての造形活動の最終目標は建築である」というバウハウス宣言にも通じる。辰野の志向は、近代的芸術観に沿ったものだろう。

日本の美術に対する工学の優位は明らか

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