厚生労働省が、ニコチン依存症を対象とした禁煙治療の公的医療保険の適用を20代の若年層にも拡大することを検討している。将来的な医療費削減を狙ったものだが、自己責任ですべき禁煙を保険の対象とすることに疑問の声も出ている。
若年層のニコチン依存症治療について話し合われた10月21日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)。健康保険組合連合会副会長の白川修二委員は「禁煙の問題は基本的に自己責任の問題。使い診療報酬で手当てするということ自体がいかがなことかと思います」と真っ向から反対する意見を述べた。
その発言に対し、日本医師会副会長の中川俊男委員が「たばこ自体がご本人と受動喫煙の関係で健康に害があり、医療費を非常に増加させているという認識は皆さんが持っていると思う」と述べるなど話し合いは平行線をたどったという。
ニコチン依存症を対象にした喫煙者の禁煙治療に保険が適用されるようになったのは平成18年のこと。対象患者と認められる条件の1つに、1日当たりの喫煙本数に喫煙年数を乗じたブリンクマン指数が200以上という基準があり、1日20本吸い続けても到達するのは10年後で、20代の若年層は対象になりづらかった。
厚労省の試算では、20代のニコチン依存症患者の約8割が対象外になっていることから、条件を緩和する方向で検討が進められている。保険が適用されれば患者の自己負担は原則3割。青森県のように国に先行する形で差額分を負担する事業をスタートさせた自治体もある。