【著者は語る】登山家・野口健氏『ヒマラヤに捧ぐ』 (1/2ページ)

2016.2.20 05:00

 ■ネパール大地震…風化させないために

 ネパールが81年ぶりの大地震に見舞われた2015年4月25日、僕はエベレストのベースキャンプ手前、標高4500メートル地点にいた。突然足元がグラッと揺れ、ガスに覆われた視界が横に流れた。羽田空港で遭遇した3・11の衝動を、体が覚えていた。地震だ!

 予定を変更して麓の村に戻ると、倒壊した家屋とがれきの山に茫然(ぼうぜん)とした。混乱して情報もない中、僕はここにとどまることを決意し、約1カ月かけてエベレスト街道の村々の被害状況を調査した。そして東京と連絡を取り、「基金」を立ち上げた。余震におびえ眠れない夜が続いた。しかも、日本はゴールデンウイーク中で新しい情報が入らない。精神的にも肉体的にも辛(つら)かったが、予想を上回る金額(1億2000万円)が集まった。まず、村人の住む場所を確保する大型テント600基をインドで調達、雨期のため土砂で埋まった道を400人のキャラバンで搬送した。次に、山小屋経営者の住宅再建資金に充てた。第3次支援は学校や寺院の復興に使う予定だ。

 調査の途上、街や家屋の状況、途方に暮れた人々の表情をカメラに収めた。そして、この地震を風化させないために、僕にとって2冊目となる写真集を編んだ。

 記録以外の写真を撮り始めたのは30代になって、ヒマラヤに挑んだ19歳のときの初々しい感動を失ったとき、小学校低学年の頃に報道写真家に憧れていたことを思い出したのだ。ブログに写真をアップしているうち、フォロワーの「風を撮ってくれ」の声に背を押され、これまでと違う視点で山と向き合った。ひたすら空を見つめ、登山家にとって最悪の状態の風を、嵐を、待つようになった。

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。