人の役に立ち、やりがいもあるけど…　奈良市肝いり「福祉職勧誘」が低調なワケ (4/4ページ)

　「ハローワーク奈良」で福祉人材コーナーを担当する谷慰作さんは「施設によっては、資格を取るまではパートや準社員として扱う所もある」と、正社員には国家資格取得が求められる傾向を指摘。実際、奈良市のある特別養護老人ホームは「無資格は基本パートから」といい、その場合の時給は８２０円。経験者でも、資格がなければ扱いは未経験と同じなのだという。

　施設を増やしても職員は？

　雇用者側は、現状をどうみているのか。奈良市の養護老人ホーム「和楽園」の小西彰施設長（６１）は、採用面接を受ける人の８割が「他施設からの転職組」といい、「それも、人手不足で、劣悪な労働環境の施設を退職した求職者が多い」と明かす。

　介護職は「きつい」「汚い」「給料が安い」の“３Ｋ”のイメージが強く、「新しくこの業界に入ってくる人は少ない」という。安倍晋三政権は「介護離職ゼロ」を掲げ、公務員宿舎跡を介護施設を運営する社会福祉法人に優遇して貸し出す方針だが、小西さんは「ただでさえ職員数が少ないのに、施設の数を増やしても良い方向に向かうかどうか…」と首をかしげ、こう続けた。

　「一施設がいくら頑張っても、現状は変えられない。みんなが安心して老後を向かえられるよう、国や自治体はよりよい施策を考えてほしい」

（神田啓晴）