【IT風土記】京都発、ICT授業の効果は?初の“見える化”にチャレンジ (1/2ページ)

ICT機器を使った公開授業(京都市立西京高校附属中)※写真は京都市教育委員会提供
ICT機器を使った公開授業(京都市立西京高校附属中)※写真は京都市教育委員会提供【拡大】

  • 実験を主導した京大学術情報メディアセンターの美濃導彦教授(左)と、分析を担当する飯山将晃准教授

 IT機器の普及にともない、電子黒板やタブレット端末を利用した授業が話題を集めている。実態はどうなのか、どんな効果が得られるのか。明らかにしようという試みが始まっている。「京都ICT教育モデル構築プロジェクト」を取材した。(早坂礼子)

 ICT授業の促進を、効果の“見える化”に挑む

 京都大学学術情報メディアセンターの美濃導彦教授はマルチメディア情報の研究で知られる専門家だ。京大のCIO(Chief Information Officer最高情報責任者)も務め、授業内容の自動撮影や遠隔講義など長年教育現場の情報化に取り組んでいる。

 およそ1年半前、日本マイクロソフトに勤める知人がこう言った。「美濃先生、国はこれから小・中学生にタブレット端末を配って授業をしたいらしい。ICT機器を使った授業はどんな効果があるのか、実証研究をしませんか」美濃教授は少し驚いた。「そんなことできるの?」。知人は請け負った。「大丈夫。システムの整備や授業で使う機器はうちが企業連合をつくって支援しますから」

 大学生だけでなく若年層にもICT教育を広げるべきだとは思うがなかなか広がらない。「いまICTを使って授業をやっているのは特定の先生だけ。いろんな先生に使ってもらわなくては裾野が広がらない。それには効果を“見える化”しなくては」と考えていた美濃教授、渡りに船とはこのことだ。さっそく京都市教育委員会に実施を働きかけた。

 京都市教育委員会は早くから教育現場へのICT導入に取り組んでいた。「校内の各所をネットワークで結ぶ校内LANやコンピューター教室などを整備してきました」と学校指導課の関智也課長補佐。そこへ美濃教授の提案だ。「効果を可視化していきたい」という言葉がど真ん中に響いた。教育委員会は「ただ“導入した”“良かったね”ではなく、ICT導入がどんな効果を生むのか検証することは、これからICTを教育現場に広げていくために必要なことだ」と実証研究開始に同意した。

プロジェクトには思わぬ伏兵が潜んでいた…