【ストレス社会で働く(5)】新生活は、うつを引き起こす原因にもなる 病院にいくべきタイミングは? (1/5ページ)

2016.4.25 12:00

昭和大学精神科の岩波明教授

昭和大学精神科の岩波明教授 【拡大】

 新年度がスタートして1カ月あまり。そろそろ新しい環境にも慣れたといいたいところだが、最近はこの季節になると毎年「小学校の壁」「学童保育の壁」「進学の壁」「昇進の壁」「在宅介護の壁」……という言葉がネット上を飛び交う。日本人はよくよく壁にぶち当たっているようだ。

 「壁」が指すもの。つまりは進学や入学そして昇進を機に生活環境が一変し、周りには慶事に見えることも、当事者にはかなりの負担とストレスになっているということなのだが、新しい環境の変化に心と体が慣れる前に、体が悲鳴を上げることもある。

 ゴールデンウイーク後の「五月病」もその一つだ。

 「就職、入学あるいは会社で昇進した…など、環境が変わるとうつ病を引き起こしやすい。新しい環境に十分になじむまでのストレスを感じることが、うつ症状やうつ病のきっかけになることは珍しくありません」

 そう話すのは、昭和大学烏山病院院長で、同大学精神科の岩波明教授だ。もちろん新しい環境におかれ多少のストレスを自覚することは、人間の防御機能として当たり前の作用で、それがすべて「うつ病」につながるというわけではない。岩波教授の話を続ける。

 「五月病がうつ病であるかというと、必ずしもそうではありません。新しい環境の変化で『うつ状態』に陥る人もいるでしょうが、この『うつ状態』はグレーゾーンが大きいのです。環境に慣れていくにつれうつ状態が改善する人もいれば、中には、昇進や入学、入社、転職を機に『五月病』『不登校』『欠勤続き』となり、そのままうつ病に進展していくケースもあります」

 グレーゾーンの「うつ状態」が「うつ病」へと進行しないためには、十分な休養と早期受診が有効だと、岩波教授は話す。

 「うつ状態が長く続くと、睡眠障害や食欲不振といった身体的症状がではじめます。眠れない、眠っても目覚めてしまう、食欲がない、胃痛や下痢などの消化器症状が続く、倦怠感などから仕事を欠勤、学校を欠席するようになると、うつ病を心配しなければなりません。精神科や心療内科を早めに受診するほうが、うつ症状を長引かせるよりは早めの改善が期待できます。ですが、精神科を受診することに抵抗感がある方も少なくないと思います。

 大学生の場合は大学の精神保健センターを受診し、保健センターを経由して精神科を紹介されますが、社会人の場合は難しい。企業内診療所を受診して、その内容がそのまま人事評価に直結、リストラ対象になってしまうこともあります。大企業が開設する企業内診療所、提携先の医療機関は受診しづらい、中小企業だとそもそも産業医がいない。そうなると個人的に土日に診療をしている心療内科や精神科のクリニックを受診する、ということになります。

 ここが肝心なところで、うつの初期段階では、本人や家族の希望的観測もあって、うつ病を疑って『精神科』『心療内科』を受診することはめったにみられません。不眠や胃痛、下痢等の消化器症状が出現すれば『内科』を受診して医師から胃薬や睡眠導入剤、ビタミン剤などを処方される。あるいは、この時期は花粉症とも重なるので、全身の不快症状を『アレルギー』と誤解して、耳鼻咽喉科を受診すると、抗ヒスタミン薬を処方されるかもしれません」

 内科薬は精神面にも作用することもあり、これがまた、うつ状態をこじらせたり、早期発見を遅らせることもある。もちろん、アレルギーの持病を持っている人が、ストレスで症状を悪化させることもおこるため、鑑別はしにくい。

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